2020 年 35 巻 2 号 p. 210-216
今回我々は,人間ドックにおいて尿中マルベリー細胞を検出したことから遅発型Fabry病の確定診断に至った症例を経験した.症例は50代男性.40代後半より高血圧加療中であった.人間ドックの心電図で左室肥大型波形を認め,心エコー検査などの結果から,無症候性の肥大型心筋症が疑われ経過観察されていた.翌年人間ドック時の尿沈渣でマルベリー細胞を認め,Fabry病が疑われたため循環器内科に再受診となった.精査の結果白血球中α-Gal A活性の低下があり,遺伝子検査で心亜型として知られるp.N215Sミスセンス変異を認め,遅発型Fabry病と診断された.
遅発型Fabry病は進行性に左室肥大をきたす疾患である.その予後は難治性心不全や致死性不整脈に規定されるといわれているが,酵素補充療法による治療法が存在することから早期の確定診断がきわめて重要となる.人間ドックでの左室肥大型の心電図異常を呈する症例のなかには遅発型Fabry病が潜在する可能性があり,そのような症例に対し尿中マルベリー小体/細胞の検出および同定を念頭においた尿検査を行うことは診断の一助になり得ると考えられた.