2020 年 35 巻 4 号 p. 620-630
目的:本研究では,2015年12月より法制化されたストレスチェック(以下SC)で努力義務とされている職場環境改善の実施状況と今後の普及や推進のための示唆を得ることを目的に調査を実施した.
方法:2017年11月,法制化以降に当財団でSCを実施した283の事業場を対象に意識調査を行った.
結果:120の事業場から回答があり(回答率42.4%),その約65%が中小規模の事業場であった.SC後の取り組みに関して,集団分析は約70%の事業場が実施しており,実施の意義を「職場のストレス状況の把握」に感じている事業場が最も多かった.意義を感じないと回答した事業場からは,「活用や対策につなげる方法が不明」,「結果を踏まえた行動ができていない」等の意見が得られた.また,職場環境改善に取り組んでいる事業場は約30%に留まったが,今後取り組みたいという事業場は約50%と多く,関心の高さが窺えた.実施に至っていない理由として,「取り組み方がわからない」,「担当者の負担が大きい」,「専門スタッフ不在」等の意見が得られた.
結論:調査結果から,集団分析を実施していても十分な活用につながっていないこと,職場環境改善に対する興味関心は高いもののノウハウや対応スタッフの不足が取り組みのハードルとなっていることが示唆された.特に中小規模の事業場においては,これらが取り組みを妨げる大きな要因となっていることが推察された.