人間ドック (Ningen Dock)
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症例報告
人間ドックで測定したCA19-9により検出された膵鉤部がんの4例
矢島 義昭松本 健石井 秀和斎藤 雄大吉田 沙也香佐藤 武敏見田 尊井戸谷 恵黒澤 功細内 康男
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2021 年 36 巻 3 号 p. 402-409

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抄録

 切除可能と考えられる病期の4例の膵鉤部がんが当院の人間ドックで検出された.膵鉤部の腫瘤は健診時の超音波検査(ultrasound: US)では検出できず,CA19-9の上昇より造影CTで検出された.男性3例,女性1例,年齢は53~64歳であった.健診時のCA19-9はそれぞれ165,66,111,43U/mLであった.腫瘍径はそれぞれ15,25,30,20mmであった.全例において腫瘍は上腸間膜静脈(superior mesenteric vein: SMV)に接しており,特に症例2,3においては180度以下ではあるが,広範に接していた.症例2,3はハイボリュームセンターではない施設に紹介されたが,SMV浸潤のために切除に至らなかった.一方,ハイボリュームセンターへ紹介された症例1,4に関しては術前補助化学療法が施行され,ypStage IIAであった.症例2ではmagnetic resonance cholangiopancreatography(MRCP)で膵尾部に分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm: IPMN)が併存していた.症例3は健診より5ヵ月後に閉塞性黄疸となって受診したが,CA19-9は約5倍に上昇していた.症例4は1年前の健診時にCA19-9の上昇を指摘されていたが,受診しなかった.翌年の健診ではCA19-9は約30倍に上昇していた.複数の小さな分枝型IPMNがMRCPで指摘されたが,健診時のUSでは描出できなかった.今回提示した膵がんはCA19-9の測定なくしては診断できなかったので,人間ドックにおけるCA19-9測定の有用性が示された.

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© 2021 公益社団法人 日本人間ドック学会
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