人間ドック (Ningen Dock)
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臨床経験(活動報告)
クリニック受診者における新型コロナウイルス抗体保有率の推移 東京都区部における定点観察:2020年6月15日より2021年10月14日
田口 淳一若月 弓枝境野 直樹古川 真依子落合 出藤巻 力也佐野 純子半下石 美佐子相澤 達畑 啓介山門 實
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2022 年 37 巻 1 号 p. 60-65

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抄録

目的:新型コロナウイルス感染症では不顕性感染が多いことが知られている.抗体価の推移を調査することで感染動向を検討した.

方法:2020年6月15日よりSARS-CoV-2抗体検査(ロシュ社)が利用可能となった.15日より翌月14日までの1ヵ月を単位として人間ドックおよび外来において抗体検査を受けた人における陽性率を算出し,陽性者のカルテレビューを行った.

結果:2020年6月15日より2021年10月14日までに初回のSARS-CoV-2抗体検査を受けた総数は5,315名であった.1ヵ月ごとの陽性率は,2020年6月~2021年10月でそれぞれ,2.0%,1.2%,1.2%,1.5%,2.9%,2.7%,4.1%,4.3%,8.8%,11.3%,5.9%,11.3%,8.3%,12.6%,13.7%,13.8%であり,2021年2月15日前後で比較したところ,それ以前では2.5±1.2%で,それ以降は10.7±2.8%と,有意に上昇していた(p=0.001).

 2021年4月14日までの初回陽性者112名の症状に関しては,過去にSARS-CoV-2 PCR陽性者(A)は14.3%,濃厚接触者,疑い症例,風邪・下痢症状がありPCR陰性もしくは未施行(B)は13.4%であり,症状や接触歴のなかった症例(C)は72.3%であった.各群における抗体価は,A:95.3±61.8,B:57.8±56.3,C:50.7±53.0であった.AとCには有意差(p=0.011)を認めた.

結論:厚生労働省が2020年12月14日~26日に検討した東京都の抗体保有率と当院の同時期の抗体保有率は2.3倍の違いがあった.また不顕性感染が7割と高率であった.当クリニックでは診療を契機とした感染はなかった.

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© 2022 公益社団法人 日本人間ドック学会
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