人間ドック (Ningen Dock)
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症例報告
人間ドックの腹部超音波検査で指摘された無症候性孤立性上腸間膜動脈解離の2例
吉野 悦子郭 友輝地畠 暁吉澤 瑛子本山 哲也小沼 清治新浪 千加子金子 教宏岸本 誠司
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2022 年 37 巻 1 号 p. 53-59

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抄録

目的:人間ドックの腹部超音波検査で指摘された無症候性孤立性上腸間膜動脈解離の2例について報告する.

方法:2020年1月~2021年2月までに,当院人間ドックの腹部超音波検査で指摘した無症候性孤立性上腸間膜動脈解離の2例.

結果:対象期間内の腹部超音波検査は9,363例,要精検170例で要精検率は1.8%であった.上腸間膜動脈解離を2例認め,有所見率は0.02%であった.

 症例① 50代男性.既往歴:特になし.喫煙歴:current smoker Brinkman Index (BI) 180.診断:瘤化を伴う孤立性上腸間膜動脈解離.

 症例② 50代男性.既往歴:高血圧,高尿酸血症,くも膜下出血.喫煙歴:ever smoker BI 1200.診断:瘤化を伴う孤立性上腸間膜動脈解離.

結論:孤立性腹部内臓動脈瘤や解離は,剖検例での発見率が0.01~0.06%と報告されている比較的まれな疾患といわれているが,近年画像診断の発達に伴い無症状での発見頻度が増加傾向にある.中高年男性に好発し高血圧と喫煙が病因に関与している可能性が示唆されており,孤立性上腸間膜動脈解離のエントリー部は起始部から0~30mmで多く報告されている.今回報告した2例とも50代男性で無症状であり喫煙歴があった.また,解離のエントリー部位は上腸間膜動脈起始部から約10~26mmの位置に確認されており,過去の報告と矛盾しなかった.腹部内臓動脈瘤の破裂や血栓による腸管壊死に陥った場合の予後は不良であり,無症状でも腹部内臓動脈病変を評価することはきわめて重要と考えられ報告した.

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© 2022 公益社団法人 日本人間ドック学会
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