2022 年 37 巻 3 号 p. 490-496
目的:心機能低下や弁膜症は緩徐に進行し,重度になるまで無症状であることも多く,診断は循環器の非専門医にとっては困難である.そこで,心機能低下・弁膜症増悪を検出することを目的として,12誘導心電図から左室収縮能低下(左室駆出率40%未満)・弁膜症を判定する日本人を対象としたAI(artificial intelligence)モデル開発を行い,その有用性について評価した.
方法:2006年から2021年までに12誘導心電図検査と心臓超音波検査を受けた検診受診者(945人,3.1%)を含む成人患者(30,467人)を対象とした後ろ向きコホートデータを用いた.心疾患症例は左室駆出率(left ventricular ejection fraction: LVEF)低下22,429人,大動脈弁閉鎖不全症(atrial regurgitation: AR)16,792人,大動脈弁狭窄症(atrial stenosis: AS)17,299人,僧帽弁閉鎖不全症(mitral regurgitation: MR)17,086人,三尖弁閉鎖不全症(tricuspid regurgitation: TR)17,253人であった.これらの症例を用いて上述の疾患を検出するためのAIモデルを作成し,汎化性能評価を行った.
結果:各AIモデルはLVEF低下に関しては感度74.1%,特異度95.3%,弁膜症に関してはAS感度18.9%,特異度95.2%,AR感度36.0%,特異度95.2%,MR感度35.6%,特異度95.2%,TR感度39.4%,特異度94.6%であった.AIが心エコー検査推奨と判定する精度に関しても感度44.7%,特異度92.9%であった.
結論:12誘導心電図から左室収縮能低下,心臓弁膜症を同時に検出できる日本人を対象としたAIモデルを初めて開発し,高い精度を得ることができた.このAIの実用化が可能となれば,心疾患が指摘されたことのない検診受診者や専門医が不在の遠隔地での診療などにおいて,心疾患を検出する有用なツールとなりうる.