2023 年 38 巻 1 号 p. 53-62
目的:一般人口のなかには,肝発がんを含めた重大な肝関連合併症を発症しうる未診断の肝炎ウイルスキャリアが潜在する.肝炎ウイルス検査は,未診断のキャリアを拾い上げる重要な契機になるが,その進捗はいまだ十分ではない.今回,肝炎ウイルス検査の受検率の向上に加え,検査の効率化を意図して,肝炎ウイルス検査陽性者のスクリーニング指標を検討した.
方法:当健診施設での2018年度の肝炎ウイルス検査の受検者を対象とし,肝炎ウイルス検査陽性者と陰性者の間で,肝線維化予測指標を含めた臨床的評価項目に対する統計学的解析を行った.
結果:肝炎ウイルス検査陽性者では,肝線維化予測指標の1つであるfibrosis-4(FIB-4)index高値(≧1.30)が独立した予測指標と考えられた(p=0.004).また,副次的な解析では,HBs抗原検査陽性者では,FIB-4 index高値(≧1.30)が同様に独立した予測指標と考えられたが(p=0.004),HCV抗体検査陽性者では予測指標を抽出できなかった.
結論:FIB-4 index高値(≧1.30)は,肝炎ウイルス検査陽性者,特に,HBs抗原検査陽性者を予測するスクリーニング指標となる可能性がある.健康診断において,FIB-4 indexは,受検率の向上とともに早期かつ効率的な肝炎ウイルス検査陽性者の拾い上げのための有用な手段になると考えられた.