抄録
目的:炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)は,免疫学的便潜血検査(immunological fecal occultblood test:IFOBT)が陽性の健常人に認められることがある.人間ドックや集団検診で,IFOBT陽性を契機に診断されたIBDの臨床的特徴を検討した.方法:過去12年間に当院では,潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)105例,Crohn病(Crohn's disease:CD)39例が診断されている.この中で,大腸がん検診のIFOBT陽性が診断契機であったUC10例,CD3例を対象とし,臨床的活動度,罹患範囲を検討した.UCは,経過観察期間中の内視鏡的罹患範囲の変化も検討した。結果:UC1O例の内訳は,男性6例,女性4例,年齢28-57歳であり,病型は左側大腸炎2例,直腸炎1例,右側・区域性大腸炎7例であった.Truelove-Witts criteriaをスコア化した臨床的活動指数はO-3であった.右側・区域性大腸炎の中では5例が無症状であり,3例が17-40カ月後に全大腸炎へ移行した.CD3例の内訳は。男性1例,女性2例,年齢49-64歳,大腸型2例と無症状の小腸大腸型1例であった.結諭:無症候性IBDが,大腸がん検診のIFOBT陽性者で認められた.右側・区域性大腸炎のUCが多く,経過観察で全大腸炎へと移行した。IFOBT陽性の無症候性BDには,慎重な経過観察が必要であると考えられた.