人間ドック (Ningen Dock)
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眼底所見と高血圧との関連についての疫学的研究
岡田 睦美宇野 充子永野 英子北村 明彦木山 昌彦佐藤 眞一嶋本 喬飯田 稔
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2007 年 22 巻 1 号 p. 29-34

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抄録

目的:眼底所見の出現・変化に及ぼす高血圧の長期的な影響を明らかにするため,経年的な循環器疫学研究を行っている秋田県井川町で,健診時に撮影した眼底写真を用いたコホート研究を行った.方法:1963-1966年(追跡開始時30-59歳),1978-1981年(追跡終了時)の両時点に眼底検査を実施した男434人を前期コホート(以下前期),同様に,1986-1989年,2001-2004年の両時点に眼底検査を実施した男492人を後期コホート(以下後期)として設定し,各追跡期間(平均15年間)における眼底所見(Scheie高血圧性変化I度以上)の出現状況,血圧区分との関連等を検討した.結果:眼底有所見者の割合は,前期では追跡開始時33%から追跡終了時45%へと有意に増加したが,後期では13%から15%へと,いずれも前期に比し低率,かつ有意な増加も認めなかった.追跡期間における眼底所見の変化の割合を,両コホート間で比較した結果,後期は前期に比し,「所見なし不変」が多く,「所見あり不変」・「増悪」は少なかった.これを血圧区分別にみると,この傾向は「非高血圧→高血圧」群・「高血圧→ 高血圧」群で明瞭に認められた.これらの背景要因として,後期は前期に比し,降圧剤服用率の高いこと,血圧レベルの低いことを認めている.結論:地域における眼底の高血圧性変化の出現率は,高血圧の管理状況や重症度により影響されることが明らかになった.

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