人間ドック (Ningen Dock)
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人間ドック男性受診者におけるコンピュータ断層撮影スキャン腹部皮下および内臓脂肪面積の増減と生活習慣の関連性
加瀬澤 信彦遠山 和成島田 昌也望月 和樹合田 敏尚
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2007 年 22 巻 3 号 p. 370-377

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抄録

目的:腹部肥満を構成する内臓脂肪および皮下脂肪について,両者の変動に関与する因子の究明は未だ充分に行われていない.そこで本研究では,人間ドックの検査項目を中心として,食習慣,性格・行動パターンなどの包括的な調査を行い,内臓脂肪と皮下脂肪の増減と関連する特性を比較検討した.対象および方法:コンピュータ断層撮影(CT)ファットスキャン検査を受診し,服薬治療中を除外した30-79歳の男性人間ドック受診者281人を対象とした.調査項目は人間ドック実施項目のほかに血中アディポネクチン濃度,食事歴法による食習慣の調査項目および生活習慣の問診調査項目を加えた120項目とした.CTスキャンを用いて計測された皮下および内臓脂肪面積をそれぞれx-y座標で表し,その各々の基準値上下限域(平均値±SD)を外れる両群間について,各項目の平均値または問診回答比率のオッズ比を算出し,比較した.内臓脂肪のみ基準範囲外の2群,皮下脂肪のみ基準範囲外の2群,および両者が同時に基準範囲外になる2群について比較を行い,それぞれ群間に差をもたらす項目の種類と強度を比較した.結果および結論:内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満および両者の複合型肥満の成因に関わる生活習慣および行動特性には違いが見られた.内臓脂肪型肥満は,個人のストレス感受性の傾向を背景とし,夜遅いタ食や満腹欲求などの日常の摂食行動の乱れと強く関連していた.皮下脂肪型肥満は,活動量低下やエネルギー摂取過剰など,エネルギー収支の不均衡なライフスタイルと強く関連していた.また両者を併せ持つ複合型肥満は,高脂肪食,濃厚な味への嗜好,早食いなどファーストフードに代表される欧米型ライフスタイルと強い関連が見られた.これらの知見から,「肥満」を一括して取り扱うのではなく,それぞれの特性と成因を踏まえて生活指導を適切に行うことの重要性が示唆された.血中アディポネクチン濃度は,皮下脂肪の変動よりも内臓脂肪の変動を鋭敏に反映する指標であることが明らかになった.一方,体重,body massindex(BMI),体脂肪率,臍ウエスト周囲径は,いずれも内臓脂肪面積よりも皮下脂肪面積により強く関連する指標であることが明らかになった.

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© 公益社団法人 日本人間ドック学会
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