人間ドック (Ningen Dock)
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健診におけるリスクマネジメント ―上部消化器内視鏡検査前投薬の有効性および健診の効率性に関する検討―
鈴木 荘太郎石飛 すみれ椎名 悠子佐志 安子小堀 悦孝
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2008 年 23 巻 1 号 p. 44-49

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抄録

目的:上部消化管内視鏡検査の前投薬の有無による効果を検討し,医療安全と管理運営に及ぼす影響について,健診センターにおけるリスクマネジメントの視点より検討した.対象・方法:まず,2000年1月-10月間の受診者583名を対象として,前投薬の有無と検査時の苦痛度との関連性に関して,受診者の自覚所見と介助者(看護師)による他覚所見とをアンケート方式により調査し,比較検討した.次に,1995年から2008年までの前投薬の有無と上部消化管内視鏡検件数および医師数,看護師数などについて比較検討した.結果:前投薬の有無に関する検討では,前投薬の有無に関わらず60-70%は自覚的に苦痛が無く楽な検査であった.一方,他覚的な苦痛例は前投薬の使用により15-20%と多く,無投薬例で5-15%と少なく,前投薬による苦痛軽減は明らかではなかった.1995年-1999年における,上部消化管内視鏡検査数は年間平均789.4例で5名の医師と2名の看護師が週5日間対応し,前投薬(静脈鎮静法;flunitorazepam,diazepam)使用を基準としていた.2002年-2008年では,年間平均1,018.6例を3名の医師と2名の看護師が週3日間対応し,無投薬を基準とした.健診センターの業務の効率性では,内視鏡検査前投薬の無使用により検査時間が短縮され,検査数が30%増加した.さらに,検査医師数と看護師数では延べ40%の削減効果があった.結語:内視鏡検査前投薬の苦痛軽減効果は検査医師及び対応に影響されていると考えられ,さらに合併症を発生し得るので,医療安全の観点から最小限の使用に止めるべきである.また,医療安全管理と健診業務の効率化は共に健診センターのリスクマネジメントとして重要である.

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© 公益社団法人 日本人間ドック学会
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