抄録
心臓カテーテル検査は,一般に医師や看護師のチームで行われる.検査では多数の検査器具の準備が必要であり,その際,器具の包装からの取り出しや受け渡しなどの取り回し(ハンドリング)がなされるが,時として器具の非清潔部分への接触や取り落としなどのエラーが生じ,器具が汚染され,患者への健康リスクや,汚染器具の廃棄などの経済的リスクがもたらされる.このリスクを減じるために,カテーテル器具のキット化がなされているが,そのリスク抑制効果は定量的に示されていない.そこで本研究では,チーム作業の分析手法であるVTA法,及び動作研究の手法であるMODAPTS法を用いて,ハンドリングにおける器具汚染の可能性(潜在リスク)を評価する手法を提案した.提案した手法を2種類の心臓カテーテルキットの使用に適用したところ,両者の潜在リスクの差違を明らかとすることができた.これらにより器具の取扱いにおけるリスク評価法として,提案手法の有益性が示された.