本研究では,介護現場で実際に介助作業を行う人の腰部負担を評価して,腰痛発生の危険性を予知するとともに,姿勢改善策を指導することのできる簡便な方法を確立することを目的とした.病室や在宅介護の現場の作業を対象とするため,大掛かりなモーションキャプチャや床反力計などの測定器は使用せずに,家庭用ビデオカメラで実際の介助作業を撮影したあと,デジタルヒューマンモデルの市販ソフトであるJackとその腰部圧迫解析機能(Low Back Compression Analysis Toolkit)を用いて,ビデオ録画をもとに介助作業を再現し,そのときの椎間板圧迫力を推定した.そのために必要な介助者の手や肩に作用する外力はパラメータとして変動させ,アウトプットとしての椎間板圧迫力の変化を見る感度分析を行うことによって,腰痛判定および介助者への改善指導を行う方法を開発した.以上の方法をベッドと車いすの間の移乗介助動作に適用し,それが有効に機能することを確認した.