NIRAモノグラフシリーズ
Online ISSN : 2758-2175
社会保障制度を通じた世代間利害対立の克服
シルバー民主主義を超えて
八代 尚宏島澤 諭豊田 奈穂
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2012 年 34 巻 p. 1-20

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抄録
少子化、高齢化の急速な進行の下で、社会保障制度を通じた世代間格差の拡大が大きな問題となっているにもかかわらず、給付と負担の均衡回復のための抜本的な改革が行われていない。こうした背後には、政治的な存在感を増している高齢世代の利益に配慮し、高齢者にとって負担増となる制度改革を先送りする政治のあり方がある。このような問題意識のもと、NIRAでは「世代間公平性プロジェクト」を立ち上げた。本モノグラフは、このプロジェクトの一部として、おおまかな事実関係と問題意識を示すため、第1に、世代会計の手法を用いて、現在世代の内の引退世代と現役世代、および現在世代と将来世代との2つの世代間格差に注目し、「生涯純税負担率」の概念を用いて、その規模を推計した。第2に、今回の「社会保障と税の一体改革」で予定されている消費税率の引き上げが、世代間格差の縮小に大きな効果を及ぼさないことを示した。第3に、日本について、高齢者の増加の地方政治への影響や高齢者の投票行動等の「シルバー民主主義」の実態についても数量的分析を行った。しかし、長期的に見れば、現役世代と高齢世代との利害対立は避けられないものではない。政治的に大きな影響力を持つ高齢者の行動は平均以上に利他的であり、将来世代への配慮も大きい。また、近い将来の社会保障制度破綻のリスクを十分に認識すれば、高齢者にも理解を得られる社会保障制度改革を通じた、世代間の調和を図ることができる。
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© 2012 公益財団法人NIRA総合研究開発機構
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