NIRA研究報告書
Online ISSN : 2758-2205
これからの働き方に関する就業者の意識
熟慮型アンケート調査から考える
水島 治郎翁 百合関島 梢恵
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2023 年 4 巻 p. 1-46

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抄録
雇用政策を議論するにあたり、働き方や雇用をめぐる人びとの意識や考え方を理解することは不可欠である。労働者が企業・産業の枠を超えて成長産業に移動し、能力や志向を活かして就労できる仕組みが求められる現在、従来の日本の雇用慣行とは異なる労働市場モデルや雇用政策の考え方に対し、人びとはどのような意見を持っているのか。本調査では、雇用に関わるさまざまな論点を「熟慮」するプロセスを通し、就業者個人の思考を探った。主な結果として、雇用の安定性を望む声が多い一方、転職に対して前向きな姿勢を持つ人も多いことがわかった。新しい知識・技能の習得を必要とするような転職に対しても、考える余地があるという人が一定程度見られる。ただし、地域を跨ぐ転職には抵抗感もありそうだ。また、能力給を望む声もかなり見られ、アメリカのような市場原理主義の労働市場モデルへの支持につながっている。他方、スウェーデン(北欧)のように、失業時の手厚い公的給付・支援がある労働市場モデルを評価する人も少なくない。日本、アメリカ、スウェーデンそれぞれの労働市場モデルを特徴づけるさまざまな論点を熟慮した上で、就業者が重視する点が個人個人で異なるという事実は重要だ。それぞれの特徴を生かし、企業や職業によって多様なモデルを提供して、労働者個人が安心して自分の働き方を選択できる社会を作っていく必要がある。
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