西日本皮膚科
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研究
各種皮膚疾患の染色体研究
第1報 エリテマトーデス,とくにSLEにおける異常クローンの出現について
笹岡 和夫
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1970 年 32 巻 4 号 p. 346-356

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抄録

近年LEの病因を遅延型過鋭反応の主役を演ずるリンパ球の機能を通して解明しようとの試みが盛んになつてきたが,筆者はLE患者末梢血中のリンパ球を培養し,その染色体分析により本症の病因をcytogeneticな見地から究明した。SLE 12例中8例,中間型LE 3例中1例に,染色体数47で22番目の染色体のtrisomy (47,G22 (+1))が見出された。なお出現頻度は算定細胞30~50個中1~3個であつた。しかしDLEの6例全例は正常で,このような染色体異常をまつたく認めなかつた。染色体異常の発生機序としては,親からの遺伝よりは免疫担当細胞であるリンパ球の細胞分裂の過程で突然変異が生じ発現したと考えるのが妥当である。染色体異常はLEの病変がsystemicに波及拡大し,血中自己抗体を生じているが,細胞免疫能の低下している例に大部分が現われている事実より,その背景に抗体産生機構もしくは免疫学的調節機構の失調の存在することがうかがわれる。なお染色体異常が,(47,22 trisomy)という共通した1つのpatternを示すことから,これは1つの異常クローンと考えられるが,はたしてBurnetの“禁止クローン”であるか否かは免疫グロブリンとの関係そのほかの点でまだ断言できない。

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© 1970 日本皮膚科学会西部支部
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