西日本皮膚科
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症例
Pasini-Pierini特発性皮膚萎縮症
本症と限局性強皮症, とくにその臨床的に硬く触れない病型との弁別
三浦 修石橋 明中條 知孝
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1978 年 40 巻 1 号 p. 25-29

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抄録

35才女子例を報告した。初診時には左大腿から下腿の後面にかけてその全長にわたつて帯状の境界明確な褐色々素沈着がみられ, 右側の対称部位には大小の同様な色素沈着巣が長軸にそうて配列する。触れると軟らかく, 萎縮を証せず, 鱗屑やライラック環もみられない。病理組織学的には, 表皮は基底層, とくに表皮突起部にメラニン増加をみるほかに異常がない。真皮にあつてはその全層にわたつて血管周囲に小円形細胞を主とする軽度の浸潤をみ, 血管壁は多少の肥厚を示す。膠原線維は一部において明らかに肥厚と均質化を来たし, 全層の弾力線維は細砕して乳頭層にあつても細粒となつている。散見する起毛筋はことごとく空胞変性を示す。上記の所見からPasini-Pierini特発性皮膚萎縮症と診定して経過を観察している。初診後約2年を経た現在, 病状になんらの変化もみない。限局性強皮症, とくにその異型である臨床的に硬く触れない病型sclérodermie atypique lilacée et non indurée (Gougerot)との弁別ははなはだ困難である。いずれの病型もその本態が触明されていない現時点にあつては, ライラック環の有無によつて, これを有する場合を限局性強皮症, 有しない場合を特発性皮膚萎縮症(Pasini-Pierini)と考えたい。

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© 1978 日本皮膚科学会西部支部
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