抄録
無汗症を主症状としたAdie症候群2症例の無汗部エックリン汗腺分泌部周囲神経を, 正常人を対照として電顕にて観察した。有髄神経, 無髄神経ともに軸索にはほとんど異常を認めなかつた。しかし有髄神経においては髄鞘, Schwann細胞, 神経周膜に, 無髄神経においてはSchwann細胞と神経周膜に変性が認められた。以上の所見は本症の主病変は節後線維にあり, とくに神経線維の髄鞘とSchwann細胞が強く傷害される疾患群のひとつであることを示している。他の発汗低下をきたす疾患の末梢神経の電顕像と文献により比較したところ, 糖尿病やアミロイドージスと類似した点があつた。また汗腺の支配神経ではない有髄神経にも変性が認められたことは, 臨床的には認められなかつた知覚異常もおこり得るものと考えた。