抄録
誘因不明の視力障害を大量のステロイドで加療中, クリプトコックス性髄膜炎を生じ, ついで両前腕, 左下腿などに数個の皮下結節が出現し, 病理組織上クリプトコックス性脂肪識炎と診断された33才男子例を報告した。髄液の培養でCryptococcus neoformansを得た。分離株はマウスヘの病原性を有した。皮下結節はamphotericin Bと5-fluorocytosineによる治療中に生じ, 皮下脂肪識に多数の胞子を認めたが, 再三にわたり試みた培養で菌の発育をみなかつた。中枢神経, 肺などの全身性クリプトコックス症の一部分症状として続発性に皮膚病変を生ずる頻度は10%程度と成書記載されているが, 本邦での報告はまだ少ない。今回は皮疹の性状やその病理組織学的所見を中心にその概略を報告し, あわせて続発性皮膚クリプトコックス症について若干の文献的考察を行なつた。