1979 年 41 巻 6 号 p. 1093-1098
高令者の慢性湿疹で汎発性, 苔癬化傾向の強い症例では血清IgE濃度の増加がみられた。本湿疹患者のアトピー皮膚炎と異なる点はつぎの通りである。1) 高令者男子に多い。2) 家族歴, 既往歴にアトピー素因を有しない。3) 苔癬化局面はアトピー皮膚炎の好発部位に生じない。4) 血中好酸球数増多は比較的軽度である。5) RASTによる特異抗原の陽性率はきわめて低い。このように本症はアトピー皮膚炎とは病因, 病態論的に異質であると考えられ, 加令にともなうTリンパ球の機能異常がIgEの産生に何らかの役割を果していることが考えられる。