1983 年 45 巻 5 号 p. 784-788
未治療およびレチノイド内服軽快後の尋常乾癬病巣部と病巣辺縁健常部の表皮ランゲルハンス細胞(L細胞)の動態をATPase染色とDR抗原を指標として検索した。未治療乾癬病巣部ではATPase陽性細胞の著明な減少がみられたが, DR抗原を指標にした場合には全くこの傾向は認められなかつた。乾癬病巣におけるL細胞は絶対数には変化がないものの機能低下があり, このためATPase陽性細胞数はみかけ上の減少を示したと考えられる。病的状態においてL細胞をATPase活性という一検出法で論ずるのは危険であり, 種々の方法を加えてその動態を検討する必要があると考えられた。未治療時に比べレチノイド内服軽快後には病巣部, 病巣辺縁健常部の両部位ともATPase陽性細胞の動態は正常化しており, レチノイドがL細胞に直接的に影響を与えた可能性も考えられた。