各種皮膚疾患166例について, 血清リポ蛋白のポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動法による分析を血清脂質値の測定とあわせて行い, 以下の結果を得た。
1) 黄色腫症16例では, 眼瞼黄色腫の1例を除き, 血清リポ蛋白泳動像はIIa型, IIb型, III型あるいはV型の異常像を示した。血清脂質値は眼瞼黄色腫の12例中5例では正常値を示したが, 他の黄色腫症例ではいずれも高値を示した。以上より, 眼瞼黄色腫ではリポ蛋白の質的異常, ときには量的異常を伴い, その他の黄色腫症では質的並びに量的異常を伴う可能性が示唆された。
2) 尋常乾癬40例ではIII型が80%と高率に認められ, 本症の病態に密接な関連を有することが示唆されたが, 血清脂質値の上昇はあつても軽度にとどまる例が主で, 古典的III型高リポ蛋白血症とは何らかの相違を有すると考えられた。
3) 掌蹠膿疱症の18例でもIII型が最も高頻度で, その点尋常乾癬と共通面を有すると考えられたが, 血清脂質値の上昇例は本症では一層高頻度で, その点一定の相違面も有することが示唆された。
4) 油症では55年度の12例の調査でIII型をはじめ, IV型, IIa型などが高頻度にみられた。57年度に年次的推移を検討した8例では, 血清脂質値の改善は明らかでなかつたが, 一部に正常比例や他の型への移行例がみられた。
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