抄録
単純型表皮水疱症では, 水疱は表皮内に存在し, 電顕的には, 本症の水疱は基底細胞の核周囲からはじまり, 水疱形成後数分以内には基底細胞の核と真皮に接している細胞質にも変性がおよぶことが観察されている。著者は, 本症の発症機序の一部を解明する目的で, 患者の尿中および水疱内より複合糖質を分離し検討した。その結果, 水疱内では酸性ムコ多糖の増加を認め, また尿中でも, 中性糖タンパクおよび酸性ムコ多糖の排泄増加を認めた。この両結果より, 本症ではただ単に表皮細胞の変性崩壊のみではなく, 真皮結合織の脆弱性があり, わずかの外的刺激で真皮結合織の病的崩壊がおこり, 間質の構成物質が水疱内に溶出し, 水疱内酸性ムコ多糖の量的増加となり, さらに分解されて尿中にも排泄され, 尿中の中性糖タンパク, 酸性ムコ多糖の増加の原因になつていると結論した。