1986 年 48 巻 1 号 p. 3-8
真皮メラノサイトはヒトにおいては生理学的意義はないとされており, そう大きな関心が寄せられている細胞ではなさそうである。したがつて本細胞の生物学的性格はなおベールに包まれた部分が多い。たとえば蒙古斑がいかなる機作によつて消退してゆくのか, また成人真皮にメラノサイトが存在するのか否か, 存在するとすればいかなる形で何をしているのかなど, まだ検討されねばならない点が多々残されている。本論文では真皮メラノサイトの性質の一端を明らかにする目的で, 本細胞と真皮結合織との関連について考察を試みた。そして真皮メラノサイトはコラーゲンあるいは弾性線維など間質成分と密接な関連を有していることを指摘した。