抄録
正常ヒト皮膚および種々の皮膚疾患におけるinvolucrinの組織学的局在を免疫peroxidase法にて検索した。正常表皮では有棘層上層から顆粒層にかけて均一に陽性, 付属器では毛包漏斗部, 峡部, 内毛根鞘, 脂腺導管が陽性を示した。各種疾患では, 基底細胞様細胞の増殖性疾患(脂漏性角化症, 老人性角化症, 基底細胞上皮腫)は陰性, 有棘細胞ないし有棘細胞様細胞の増殖性疾患(尋常乾癬, 扁平苔癬, ケラトアカントーマ, Bowen病, 有棘細胞癌)は陽性であり, involucrinの局在により明瞭に区別された。染色態度は良性増殖性の尋常乾癬, ケラトアカントーマが均一であるのに対し, 悪性のBowen病, 有棘細胞癌では, 染色性の異なる細胞が混在するパッチワーク状を呈し, 良性と悪性の鑑別に際して有用と思われた。扁平苔癬と老人性角化症の表皮は顆粒状を呈し, その機序として基底細胞の障害が関与するものと考えられた。