1988 年 50 巻 4 号 p. 667-670
53才男子の長期アルコール大量摂取歴, 尿中ポルフィリン体軽度増加を伴う扁平苔癬の1例を報告した。病理組織学的にPAS陽性物質の沈着, 蛍光抗体法直接法で免疫グロブリンの沈着も認められ, porphyria cutanea tarda(PCT)を疑わせる症例であつた。しかし, 尿中ポルフィリン体coproporphyrin(CP)優勢でPCTの特徴的所見ではなく, 糞便中ポルフィリン体も正常像を示していた。手背皮膚の病理組織学的所見は扁平苔癬に一致したが, 蛍光抗体法直接法で真皮上層血管周囲の免疫グロブリンの沈着も著しかつた。以上の所見から, 本症例を軽度の尿中ポルフィリン体上昇を伴つた扁平苔癬と診断したが, PCTとの異同に注意を要する症例と思われた。