1990 年 52 巻 2 号 p. 293-297
ポリアミン合成の律速酵素であるオルニチン脱炭酸酵素(ODC)は, マウス実験的皮膚発癌におけるプロモーション過程のマーカー酵素として知られている。アルビノ·ヘアレスマウスに中波長紫外線を照射すると, この酵素活性は著明に上昇した。このメカニズムを分子生物学的に検索する目的で, マウス皮膚よりmRNAを抽出し, ODC cDNAをプローブとしてノーザン·ブロット分析を行つた。その結果, 90 mJ/cm2の中波長紫外線照射により, コントロールに比べて, 4時間後で2.0倍, 24時間後では2.6倍のODC mRNAレベルの増加を認めた。酵素活性の上昇とmRNAレベルの増加度とは並行せず, 転写後の調節の可能性も示唆されたが, 中波長紫外線照射によるODC活性の促進には, ODC mRNAレベルの増加が関与することが示された。