西日本皮膚科
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52 巻, 2 号
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図説
綜説
症例
  • 駒田 信二, 藤原 作平, 高安 進, 鳥巣 岳彦
    1990 年 52 巻 2 号 p. 226-230
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    28才女子。発熱·口腔内アフタ·外陰部潰瘍および関節痛を主訴に入院。下腿の結節性紅斑様皮疹の既往あり。眼症状は認めない。入院時, 舌尖にアフタ性潰瘍を1個, 外陰部に穿掘性の潰瘍を認め, 左2·3指PIP関節および両手関節に腫脹を認めた。検査上白血球数の増加, 血沈の亢進·CRPの上昇を認めた。針反応陽性。RA2+, RAHA80×。HLA B5陽性。関節のX線所見では, 左2·3指PIP関節, 両手関節に著明な軟部組織の腫脹と関節腔の狭小化, 骨破壊像を認め, 手関節では強直性関節炎の像を呈した。両膝関節·左足関節部でも軽度であるが同様の変化を認めた。RAと鑑別し難い関節症状を合併した不全型ベーチェット病と診断した。サラゾピリン, アスピリン, プレドニゾロンの投与にて関節症状, 粘膜症状ともに軽快した。
  • —過去12年間に日本病理剖検輯報に記載された皮膚筋炎·多発性筋炎症例における悪性腫瘍合併の検討を加えて—
    夏目 妙, 千見寺 ひろみ, 鈴木 一郎, 高澤 博
    1990 年 52 巻 2 号 p. 231-236
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    61才女子, 胃癌を合併した皮膚筋炎の1例を報告した。日光照射部の紅斑浮腫性変化と筋力低下に加えて, Borrmann 2型胃癌を認めた。ステロイドの使用, 癌腫の摘出により皮疹は軽快し, CPKも正常範囲内となつたが, 筋力の改善はなかつた。約7ヵ月後, 癌の再発および広範な転移により死亡した。しかしこのときもとくに皮疹に増悪はなかつた。また, 日本病理剖検輯報(1975年∼1986年)に記載された皮膚筋炎·多発性筋炎症例における悪性腫瘍合併につき検討した。集め得た615例中悪性腫瘍合併は163例(26.5%), そのうち男性の合併率は35.1%, 女性20.6%で男性に合併が多くみられた。皮膚筋炎383例のうち悪性腫瘍合併は117例(合併率30.5%), 多発性筋炎232例中合併は46例(同19.8%)であつた。合併腫瘍としては胃癌が49例と最も多く, 全体の27.8%であつた。しかし, この値は既報告値に比し低く, 一方肺癌, 甲状腺癌, 卵巣癌の合併が増加している傾向がみられた。
  •  
    吉井 章, 野上 玲子, 前川 嘉洋
    1990 年 52 巻 2 号 p. 237-240
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    36才女子のBarrett食道を生じたCREST症候群の1例を報告した。本症例はCREST症候群の5症状をすべてそろえ, また食道病変としてBarrett食道を有していたため積極的に手術療法を施行し, 著明に臨床症状が改善された興味ある症例であつた。
  • 荒瀬 誠治, 中西 秀樹, 武田 克之, 藤本 篤夫
    1990 年 52 巻 2 号 p. 241-244
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    21才女子の下肢に皮下膿瘍で発症したMycobacterium fortuitum皮膚感染症を報告し, 自験例を含め本邦におけるMycobacterium fortuitum皮膚感染症既報告例につき臨床上の重要点に留意し検討, 考察をくわえた。皮疹は全症例に皮下膿瘍がみられた。また膿汁の塗抹で抗酸菌が検出されたことより本検査の重要性についてのべた。
  •  
    柳沢 一明, 白石 正憲, 末永 義則
    1990 年 52 巻 2 号 p. 245-255
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    抗生物質投与後, 皮疹を生じた伝染性単核球症の3例を報告し, 文献的考察を行つた。
    症例1: 21才女子。肝炎軽快後, 発熱があり, セファクロルを投与された。2日後, 全身に皮疹が出現し, 全身所々のリンパ節が腫脹してきた。
    症例2: 7才男子。発熱があり, ピペラシリンナトリウムを投与された。その後, 全身に紫斑を混じた丘疹が多発し, 頚部, 腋窩リンパ節が腫脹してきた。
    症例3(症例2の妹): 4才女子。発熱があり, セファトリジンプロピレングリコールを投与され, 全身に皮疹が拡大してきた。
    本症は他のウイルス感染症, 悪性リンパ腫, 薬疹などとの鑑別が必要である。
  • 加藤 卓朗, 角田 明子, 袋 秀平, 佐野 隆夫, 香川 三郎, 山本 泉, 滝野 長平
    1990 年 52 巻 2 号 p. 256-259
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    Exophiala jeanselmeiによる黒色真菌症を報告した。症例は76才女子で, とくに誘因なく, 左手背に皮下結節を生じた。近医にて切開·排膿, さらに切除したが, 4ヵ月後, 手術瘢痕両側に同様の皮下結節を2個生じた。1個切除したところ, 病理組織学的に菌要素を認めたため, 当科を紹介された。初診時, 左手関節背に直径8mmの下床とは可動性のある境界鮮明な皮下結節がみられた。結節は嚢腫状に弾性硬に触れ, 皮膚には軽い発赤がみられた。その他に手術瘢痕を2個認めた。組織片よりExophiala jeanselmeiを分離した。病理組織学的には, 皮下に巨細胞を混じた組織球と小円形細胞の浸潤よりなる壁に囲まれた膿瘍がみられ, 褐色調の胞子連鎖, 菌糸を認めた。他の施設で切除した2個の組織標本もほぼ同様な所見で, PAS陽性に染まる菌糸, 胞子, 胞子連鎖を多数認めた。単純に切除縫合したのみであるが, 再発はみられていない。自験例は臨床および病理組織学的には, 典型的な皮下嚢腫であつたが, その直径が8mmと非常に小さかつたことが特徴的である。また自験例は計3ヵ所の病変を認めたが, 多発した機序としては, 原発巣の切開·排膿あるいは切除時の播種ないし不十分な切除による局所再発が, 最も考えやすいと思われた。小さい皮下嚢腫を, 診察する際には, 常に本症も頭にいれ, 充分注意の上, 切除などの治療を行うとともに, 菌学的ならびに病理組織学的検査を行う必要があろうと考えられた。
  • —皮膚発生例における臨床的検討—
    前川 嘉洋
    1990 年 52 巻 2 号 p. 260-262
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    59才男子の左陰嚢に生じたverruciform xanthomaの1例について報告した。1981年より本邦における皮膚発生例は20例であり, 女性例2例を含め, 男性例においても陰部発生例が殆どで, 年令的には中年期より老年期に発生頻度が高かつた。組織学的には乳頭の延長があり, その乳頭層内に多数の泡沫細胞が浸潤していた。これらの泡沫細胞はズダンIII染色に陽性であつた。
  • 戸田 則之, 中西 秀樹, 長江 浩朗, 田中 伸二, 菊池 誠, 荒瀬 誠治, 重見 文雄, 武田 克之
    1990 年 52 巻 2 号 p. 263-267
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    術後16年を経て出現した術後性上顎骨嚢胞と思われる症例を, 腸骨を用いて再建し, 再発も無く整容的にも満足しえたので報告した。また本例も含め, 上顎骨周囲に発生する疾患について若干の文献的考察を加えた。
  • 荻山 幸子, 安藤 不二夫, 原 一夫, 藤井 初美, 大橋 勝
    1990 年 52 巻 2 号 p. 268-274
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    60才女子。慢性関節リウマチ経過中に下腿の結節性紅斑様皮疹に始まり, 数回の自然消褪を示した皮膚原発のB細胞性リンパ腫の1例を報告した。自験例は初診時には皮膚病変のみで全身的検索では異常を認めなかつた。病勢の進行と共に腫瘤は躯幹, 顔面, さらに眼窩内へと広がり, 悪液質および呼吸不全にて死亡した。剖検では, 大動脈周囲および腹腔内リンパ節に腫瘍細胞の浸潤がみとめられた。組織学的にLSG分類diffuse lymphoma mixed cell typeからlarge cell typeへの移行がみられ, 免疫組織学的にCD-20陽性でIgM-κのモノクロナリティを示した。自己免疫疾患と悪性リンパ腫との関係について若干の考察を加えた。
  • 小野 雅史, 幸田 衞, 濱田 真世, 植木 宏明
    1990 年 52 巻 2 号 p. 275-278
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    35才女子。扁平浸潤期に受診した菌状息肉症で, 初診後4年を経て腫瘍期となり, 急速に増悪した。同時に著明な末梢血好酸球増多(最高値: 白血球数124,000/μl, 好酸球89.5%)を生じた。好酸球数と皮疹および血清LDH値は平衡し, 治療にも反応を示した。末梢血像, 骨髄像による検索では好酸球の腫瘍化の所見はなく, また剖検でも寄生虫やアレルギー疾患の合併はみられなかつた。これらのことより自験例の好酸球増多は, 腫瘍細胞自体が好酸球の増殖を刺激した結果と推測した。
  • 近藤 靖児, 宮元 千寿, Chin-Huai KEONG, 佐藤 吉昭, 藤原 美定, 関 建次郎, 神田 秀一
    1990 年 52 巻 2 号 p. 279-284
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    Basaliomaを生じたF群色素性乾皮症(XP)の兄妹例(XP90TO, 42才男; XP92TO, 40才女)を報告した。父方は代々山形県, 母方は代々埼玉県出身で, 血族結婚はない。兄は8才ごろ, 妹は3∼4才ごろから日焼けしやすいことに気づき, 両例とも水疱形成を伴なうほどの激しい症状を呈することがあつた。その後2年くらいして露光部に色素斑が目立ちはじめ, 30才ごろからは四肢に脱色素斑も混じてきた。最近も日光過敏症状は持続している。露光部皮膚は粗造, 乾燥性であり, 兄は42才時6個, 妹は41才時1個のbasaliomaがそれぞれ確認された。神経学的異常はない。光線テストでは, 最少紅斑量(MED)は正常であつたが, 紅斑反応のピークは照射後48時間と遅延した。患者由来培養線維芽細胞を用いた検査では, 不定期DNA合成(UDS)は正常の12%, 紫外線致死感受性はn=1.1, Do=1.7J/m2と正常人とA群XPの中間に位置した。相補性テストによりF群と決定した。
  • 佐藤 貴浩, 近藤 靖児, 勝俣 道夫
    1990 年 52 巻 2 号 p. 285-287
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    36才女子の頭部に生じたclear cell basal cell epithelioma(以下clear cell BCEと略す)の1例を報告した。腫瘍塊は, 楕円形で胞体に乏しい好塩基性の細胞からなり, 腫瘍塊辺縁には柵状配列がみられた。一部の細胞は明調で, 微細顆粒状の胞体を有し, また, 小空胞や円形の空隙も認められた。これらの明調な細胞はPAS染色でわずかに陽性を呈したが, Sudan III染色では陰性であった。S100蛋白, CEAおよびリゾチームは検出されなかった。Clear cell BCEはBCEのまれな亜型として重要であると思われた。
  • 三砂 範幸, 元木 清久, 幸田 弘
    1990 年 52 巻 2 号 p. 288-292
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    68才男子。約50年間, 不完全な治療のまま放置されていた右下肢の皮膚疣状結核の, 瘢痕部に生じた外毛根鞘癌の1例を報告した。病理組織学的には, malignant proliferating trichilemmal tumorの組織像に一致した。皮膚疣状結核の瘢痕部に生じた外毛根鞘癌としては, 本邦における第1例目の報告である。
研究
  • 幸野 健, 水野 信之, 谷口 彰治, 谷井 司, 石井 正光, 濱田 稔夫, 吉田 英樹, 湯浅 勲, 大谷 周造, 森澤 成司
    1990 年 52 巻 2 号 p. 293-297
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    ポリアミン合成の律速酵素であるオルニチン脱炭酸酵素(ODC)は, マウス実験的皮膚発癌におけるプロモーション過程のマーカー酵素として知られている。アルビノ·ヘアレスマウスに中波長紫外線を照射すると, この酵素活性は著明に上昇した。このメカニズムを分子生物学的に検索する目的で, マウス皮膚よりmRNAを抽出し, ODC cDNAをプローブとしてノーザン·ブロット分析を行つた。その結果, 90 mJ/cm2の中波長紫外線照射により, コントロールに比べて, 4時間後で2.0倍, 24時間後では2.6倍のODC mRNAレベルの増加を認めた。酵素活性の上昇とmRNAレベルの増加度とは並行せず, 転写後の調節の可能性も示唆されたが, 中波長紫外線照射によるODC活性の促進には, ODC mRNAレベルの増加が関与することが示された。
  • 佐藤 俊次, 吉永 裕一郎, 早稲田 豊美, 久野 佑三, 新井 克志, 浅野 伍朗
    1990 年 52 巻 2 号 p. 298-305
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    瘢痕ケロイドの発生増殖に関しては種々の因子が関与している。著者らは瘢痕ケロイドの原因として張力に着目し, 体表各部位に発生した瘢痕ケロイドの形態ならびに経時的変化についてretrospectiveに観察した。ヒトの体表面を22ヵ所に分画し, 119人, 160症例の瘢痕ケロイドを体表各部位別に分類した。その際, 瘢痕ケロイドを3型に大別した。その結果, 瘢痕ケロイドの発生増殖の一因として局所の皮膚の伸展性, 関節や筋肉などにより局所に加わる力があり, これらが瘢痕ケロイドの形を規定するものと考えられた。
  • 山口 潤, 近藤 靖児, 川田 暁, 佐藤 吉昭
    1990 年 52 巻 2 号 p. 306-309
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    昭和34年より62年までの29年間に, 当教室で経験した日光角化症59例, 69個について, その病理組織型と間質の弾力線維の変性の度合いとの関連性を検討した。また対照群として, 顔面に生じた脂漏性角化症25例の弾力線維変性とも比較, 検討した。その結果, 日光角化症は対照に比べ弾力線維の著明な変性がみられ, その変性の程度を病理組織型別にみると, 肥大型では皮疹部に弱く, 周辺部に強かつたが, 萎縮型では皮疹部, 周辺部ともに強い変性がみられた。以上より, 日光角化症の発生には太陽光線への曝露がきわめて重要な外因と思われること, 一方その発症には個体側のなんらかの因子も関与していること, さらに弾力線維の変性は回復する可能性のあることなどが示唆された。
  • 安岐 敏行, 谷口 宗弘, 西尾 徹也, 谷口 充, 阿曽 三樹
    1990 年 52 巻 2 号 p. 310-313
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    透析患者51名のそう痒の程度を4段階に分類し, BUN, クレアチニン, Ca, P, PTH-C末端値, 尿酸値などの検査所見および皮膚所見との関連性を比較検討した。その結果, 1)透析歴が長くなると, そう痒の出現の割合が増加した。2)BUN, クレアチニン, Ca値, P値, PTH-C末端値, 尿酸値などの生化学的異常とそう痒の程度に相関性はみられなかつた。3)そう痒が強いグループほど皮膚の乾燥, 色素沈着, 爪の変形などの皮膚病変を伴う傾向が認められた。以上より, 透析療法の発達により生化学的検査の異常が透析患者のそう痒の原因になることは少なくなつたが, 長期にわたる透析により乾皮症を中心とした皮膚障害を原因とする場合が増えつつあるものと考えた。
  • 石井 完児, 河内山 明, 岡 大介, 幸田 衞, 植木 宏明
    1990 年 52 巻 2 号 p. 314-317
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    昭和61年1月より昭和63年12月までの3年間に, 川崎医科大学附属病院皮膚科を受診した膠原病およびその類縁疾患107例について, 間接赤血球凝集反応による血中トキソプラズマ抗体価を測定した。その結果, 抗体陽性率は皮膚筋炎(DM)が50.0%であつたのに対し, コントロール群の正常妊婦は5.9%, 皮膚筋炎以外の膠原病およびその類縁疾患は12.9%, 全身性エリテマトーデス(SLE)は9.4%, 全身性強皮症(PSS)は17.4%で, 明らかに皮膚筋炎で高い陽性率を得た。
  • —第1報—通常の培養法との比較および小集団発生例についての検索—
    西本 勝太郎
    1990 年 52 巻 2 号 p. 318-322
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    Cotton-swabによるサンプリングと抗生物質加サブロー培地を組み合わせた真菌学的検索手技を紹介し, 小グループ内での足白癬の検索に応用した結果を併せて報告する。外来患者を対象とした, 本法と, 通常のメス, ピンセットによる試料採取と斜面培地培養法の比較では, 陽性率に有意の差はなかつた。一施設内居住者22例についての, 本法を用いた趾間部の検索では, 4例の足白癬患者より各2株ずつのTrichophyton rubrumT. mentagrophytesを検出したが, 浸軟や鱗屑を示した他の10例からは, KOH法, 通常の培養法, cotton-swab法のいずれにても菌は検出できず, これらの症例は単に局所の湿潤にもとづく変化と結論した。一方まつたく病変の見られない3例の趾間からもT. mentagrophytesを分離したが, T. rubrumは1株もえられなかつた。健常皮面における皮膚糸状菌の存在の意義およびその検出にさいしての本法の利点について論じた。
講座
治療
  • 中澤 淳, 大城戸 宗男
    1990 年 52 巻 2 号 p. 330-334
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    頭部皮膚疾患患者に対するコラージュシャンプーの治療補助効果, 安全性および有用性の検討を行い, 下記の結果を得た。
    1) アトピー性皮膚炎を中心とした頭部皮膚疾患患者20例に対し, 「補助効果が認められた」以上に評価されたものは9例(45.0%), 「補助効果がやや認められた」以上に評価されたものは20例(100.0%)であつた。
    2) 副作用や皮疹の増悪した症例は皆無であつた。
    3) 有用性の判定では, 有用以上が9例(45.9%), やや有用以上が20例(100.0%)であつた。
    4) 本シャンプー単独使用の9例については, 有用以上が4例(44.4%)であつた。
    以上の成績から, コラージュシャンプーはアトピー性皮膚炎を中心とした頭部皮膚疾患に対し有効かつ安全なシャンプーであり, 外用剤, 内服薬の投与と併用すれば, 治療効果を高めるものと考えられた。
  • 安野 洋一
    1990 年 52 巻 2 号 p. 335-339
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    頭部皮膚疾患患者29例に, コラージュシャンプーを使用させ, その有用性について検討した。
    1) 治療補助効果では, 「補助効果が認められた」以上に評価されたものは, 14例(48.3%), 「補助効果がやや認められた」以上に評価されたものは, 20例(67.0%)であつた。
    2) 副作用は1例もみられなかつた。
    3) 有用性の判定では, 「有用」以上14例(48.3%), 「やや有用」以上20例(69.0%)であつた。
    以上の成績から, コラージュシャンプーは頭部皮膚疾患にも比較的安心して使用できる刺激性の低い安全かつ有用なシャンプーと考えられた。
  • 手塚 正
    1990 年 52 巻 2 号 p. 340-344
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    コラージュハンドクリームを乾燥, 粗ぞう化, 角化皸裂などの局面を有する手湿疹, 手荒れ患者23例に使用させ, その有効性, 安全性および使用感について検討した。鱗屑, 紅斑, 硬化·角化, 亀裂の改善率はそれぞれ82.6%, 93.3%, 94.1%, 80.0%と高く, また, 改善例の90%以上を症状の消失例が占めた。副作用は全例に認められず, 有用性判定についても, きわめて有用16例, 有用5例, やや有用1例, 有用性なし1例と有用以上91.3%, やや有用以上95.7%との成績であつた。使用感についての患者の評価も良好で, ベタつきについてはほぼ半数がないと答えており, あるとの回答は皆無であつた。
  • 赤坂 俊英, 昆 宰市
    1990 年 52 巻 2 号 p. 345-350
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    コラージュハンドクリームを手荒れを有する家婦湿疹患者に使用し, その治療効果, 安全性ならびに有用性について検討した。乾燥, 鱗屑, 紅斑, 硬化·角化, 亀裂でそれぞれ85.0%, 70.0%, 78.9%, 65.0%, 70.6%の高い改善率が得られ, 重篤な副作用も認められなかつた。同時に施行した貼布試験では, 安全性の高いA社ハンドクリーム, 日本薬局方精製水と同等の低い皮膚刺激性であつた。以上の結果より, コラージュハンドクリームは手荒れに有効かつ安全に使用できると考えられた。
  • 九州地区NI-009研究会
    1990 年 52 巻 2 号 p. 351-359
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    立体的網状構造を有する微細粒のデキストリンポリマーに0.9%(w/w)ヨウ素を物理的に含有し, 強力な吸水効果と殺菌作用を有する外用散剤のNI-009(cadexomer iodine)の臨床第三相試験として, 各種難治性皮膚潰瘍を有する患者47例を対象に, 4週間および長期投与における臨床上の有効性と安全性, ならびに有用性について検討した。対象47例の内訳は, 褥瘡32例, 熱傷潰瘍7例, 下腿(うつ滞性)潰瘍およびその他の潰瘍が4例ずつであつた。試験の結果, 4週間投与における有効性で評価した全般改善度では「有効」以上の改善率は63.9%であり, 安全性についてはまつたく問題なく, 「有用」以上の有用率は68.1%であつた。また, 長期投与試験においても全般改善度では改善率が75.0%, 安全性に問題はなく, 有用率が79.2%と高い値が得られた。以上より, 本剤はさまざまな難治性皮膚潰瘍疾患に対し, 外用剤として高い有用性をもつものと考えられた。
  • 中山 樹一郎, 尾木 兵衛, 堀 嘉昭, 矢幡 敬, 安田 勝, 倉員 正俊, 山野 龍文
    1990 年 52 巻 2 号 p. 360-364
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    複合抗生物質製剤—スルバクタムとセフォペラゾン1:1の合剤—スルペラゾンを陥入爪術後, せつ·よう·感染性粉瘤の切開·排膿後, 術後二次感染巣などにガーゼ湿布, ガーゼタンポンあるいは粉末散布をおこない, その臨床効果, 有用性を検討した。今回使用した49症例に対する有効率は81.7%, 有用率は83.6%であり, 細菌学的にも26例中20例に菌の消失がみられた。注射用抗生剤の局所外用は健康保険上現在みとめられていないが, 重症皮膚感染症に対するこのような投与法の可能な抗生剤の開発も今後必要になるのではないかと考えられた。
  • 安藤 正明, 国分 純, 佐藤 英嗣, 清水 忠道, 村松 隆一, 山中 清光, 大河原 章
    1990 年 52 巻 2 号 p. 365-370
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    ビダラビン3%軟膏(MJD-1741)の単純疱疹に対する有効性および安全性を検討した。総症例数は38例, その内訳は, 口唇ヘルペス31例, カポジー水痘様発疹症2例, 陰部疱疹1例, 顔面に発症した単純疱疹2例, 臀部, 手·口唇部に発症した単純疱疹各1例であつた。有効率は, 「有効」以上が50.0%, 「やや有効」以上が81.6%であつた。なお, 単純疱疹の既往歴を有する患者に対して, MJD-1741使用による今回の病相における経過の印象を調査した結果, 過去の病相に比較し「短かつた」または「よかつた」と答えた患者は, 25例中16例(64.0%)であり, 「長かつた」または「悪かつた」が2例(8.0%)とMJD-1741の印象は良い結果であつた。また, 副作用は認められず, 高い安全性が示唆された。有用率は, 「有用」以上が55.3%, 「やや有用」以上が81.6%で単純疱疹に対して有用性が高く, 安全性の面でも優れた薬剤であることが示唆された。
  • —抗ヒスタミン剤併用と単独投与の比較試験—
    城野 昌義, 江川 清文, 荒尾 龍喜, 木藤 正人, 前川 嘉洋, 古城 八寿子, 友田 哲郎, 工藤 昌一郎, 武藤 公一郎, 林原 利 ...
    1990 年 52 巻 2 号 p. 371-377
    発行日: 1990/04/01
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル 認証あり
    共同研究により, そう痒性皮膚疾患に対するオキサトミド(セルテクト)の臨床的有用性を検討する目的で, 本剤の単独治療と抗ヒスタミン剤の併用治療の比較試験を封筒法により行つた。その結果セルテクトの単独治療および併用治療ともに早期より効果が発現し, 両群ともに各観察日での全般改善度で70∼80%の改善度(改善以上)が得られた。また, 止そう効果についても両群ともに満足な効果が得られたが, そう痒の程度の強い症例については併用治療が単独治療に比し早期(1週後)の改善度で有意に優れた結果が得られ, この様な症例に対しては併用治療の有用性が示唆された。安全性についても特に問題はなかつた。したがつてそう痒性皮膚疾患に対するセルテクトを基本にした治療法は臨床的に有用であると考えられた。
世界の皮膚科学者
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