西日本皮膚科
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研究
分岐脂肪酸コレステリルエステル配合浴用剤の保湿効果
鈴木 淳子萬 秀憲芋川 玄爾高島 巌
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1994 年 56 巻 3 号 p. 494-498

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抄録

天然コレステロールエステルと類似した構造をとるcholesteryl isostearate(以下IS-CE)を応用した浴用剤の水溶性成分溶出抑制作用と, 保湿効果を検討した。健常男性18名の前腕部をアセトン·エーテル(AE)で15分間脱脂処理後, IS-CE配合浴用剤浴(20g/150l, 40℃, 5分)を行った。水溶性成分(ニンヒドリン陽性物質)のさら湯中溶出に対する抑制率は, 浴用剤中のIS-CE量の増加に伴い高まる傾向にあり, IS-CE 4.8%配合浴用剤はさら湯に比べ有意に抑制した(p<0.05, paired t-test)。健常男性15名の前腕部をAEで15分間脱脂処理後, IS-CE 4.0%配合浴用剤またはIS-CEを除いた浴用剤浴(いずれも20g/150l, 40℃, 10分)を2日間行い, 入浴翌日の角層水分量を測定した。IS-CE 4.0%配合浴用剤浴はさら湯浴より角層水分量の回復が有意に高く(p<0.05, paired t-test), また, IS-CEを除いた浴用剤浴よりも高い傾向にあった。下腿に左右ほぼ同程度の乾燥性皮疹を発症した女性6名の一方の下腿にIS-CE 4.0%配合浴用剤浴(20g/150l, 40℃, 20分), 他方にさら湯浴を8日間行った。IS-CE 4.0%配合浴用剤浴はさら湯浴に比べ, 乾燥性皮疹を有意に改善した(p<0.05, Wilcoxon signed rank test)。以上の結果から, IS-CE配合浴用剤浴による角層から浴水中への水溶性成分の溶出抑制作用と保湿効果が確かめられた。

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© 1994 日本皮膚科学会西部支部
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