抄録
54歳の男性。右下腹部に生じたアポクリン腺癌の1例を報告した。約15年前より右下腹部に皮下結節を触れるようになり, 5年前より同部に紅色皮疹が出現してきた。初診時には32×24mmの局面および同部皮下に弾性硬の結節を数個触れた。病理組織学的所見では真皮全層から皮下脂肪織上層にかけて, 管腔様構造をとる腫瘍細胞が増殖していた。腫瘍細胞は異型性に乏しいが腺腔形成が目立ち, 一部に断頭分泌を認めた。酵素組織化学所見では酸フォスファスターゼ·β-グルクロニダーゼともに強陽性で, 免疫組織化学的所見ではCEA陽性, S-100蛋白は陰性を示した。