西日本皮膚科
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57 巻, 2 号
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図説
綜説
症例
  • 三砂 範幸, 田中 達朗
    1995 年 57 巻 2 号 p. 222-225
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    46歳の女性。初診の約2年前より顔面, 手背に痒みのある皮疹を生じていた。初診時の臨床は, 前額, 口囲および両側頬部の暗赤色の浸潤を伴った顔面全体の瀰慢性の色素沈着, および両側手背から前腕にかけての浮腫状の彌漫性色素沈着であった。前腕からの皮膚生検はlichenoid tissue reactionの組織像を呈した。サクラソウPrimula obconicaの花·葉·茎によるパッチテストで陽性を示したこと, および病理組織像からPrimula obconicaによる色素沈着性接触皮膚炎と診断した。この特異な臨床像は, 約2年間にわたってPrimula obconicaによるかぶれと気付かずに, この花に接触しつづけた結果によるものと考えられた。
  • 長谷川 核三, 野田 徳朗, 浦田 裕次, 柳原 誠, 高橋 健
    1995 年 57 巻 2 号 p. 226-229
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    多型滲出性紅斑の経過中に類白血病反応を認めた症例を報告した。43歳の女性, 感冒様症状より始まり, 大腿に拇指頭大までの紅斑が出現。2日後紅斑は全身に拡大し, 一部に水疱形成がみられた。初診時顔面を除くほぼ全身に滲出傾向を伴った紅斑と一部に緊満性水疱を認めた。血液検査にて, 白血球19,300/mm3(血液像: pro my 2.6%, myelo 2.8%, meta my 4.8%, stab 9.2%, seg 19.8%, eosino 24.8%, lympho 10.2%, mono 10%)を示し, 3日後52,400/mm3となった。骨髄生検標本で異型細胞は認められず。病理組織学的所見は多型滲出性紅斑の像に一致した。類白血病反応を呈した多型滲出性紅斑と診断し, プレドニゾロン(PSL)30mgを投与したところ, 全身状態の改善および白血球数の減少を認めた。
  • 村山 直子, 遠藤 光子, 浅島 裕雄, 松岡 芳隆, 斉藤 隆三, 岩平 佳子
    1995 年 57 巻 2 号 p. 230-234
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    37歳の男性。初診の3年前に項部にざ瘡様皮疹が多発, 徐々に融合, 拡大隆起し12×5×2cmのケロイド状の腫瘤となりブラシ状に束状の毛髪が群生。初診1ヵ月前より出血排膿をみる。同時期より上気道炎症状に引続き足関節痛, 筋痛が出現。体幹, 下肢に径数cmの膿皮症様皮疹が散在。両側前腕, 下腿には丘疹, 紫斑が多発。病理組織学的に項部の腫瘤は頭部乳頭状皮膚炎, 下腿の紫斑はアナフィラクトイド紫斑, 体幹の皮疹は浅在性の膿皮症でsuperficial granulomatous pyodermaと診断した。腫瘤は抗生剤に反応せず切除縫縮。紫斑はPSL30mg内服開始後消退した。
  • 可知 久代, 松原 勝利, 前田 学, 森 俊二, 北島 康雄
    1995 年 57 巻 2 号 p. 235-240
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    1989年11月より両手掌, 膝関節の運動制限のため整形外科と神経内科を受診し, その後当科に紹介されPSSと診断されステロイドのパルス療法を行った14歳の男児を報告した。Proximal scleroderma(+), Raynaud’s sign(-), sclerodactylia(+), pitting scars(+), 指末節短縮(+), 爪上皮点状出血(+), 指顆粒状変化(+), 色素沈着(+), 舌小体の短縮(+), 両下肺野線維化(-), 食道下部蠕動低下(+), 前腕伸側の皮膚生検からPSS(硬化期)と診断した。抗核抗体は1280倍(nucleolar type)であった。治療はパルス(メチルプレドニゾロン1000mg)療法を開始, 以後漸減したところ2ヵ月頃より皮膚硬化·拘縮はともに改善し, 現在はプレドニン5mg/日継続中である。臨床症状は悪化もなく軽快傾向を保っている。
  • —Hypereosinophilic Syndromeとの境界例—
    駒田 信二, 工藤 芳子, 板見 智
    1995 年 57 巻 2 号 p. 241-246
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    Eosinophilic cellulitis(Wells症候群)の1例を報告した。顔面, 手掌·足底を含む全身に浮腫性紅斑, 浸潤を伴う丘疹が出現, 一部では膿疱, 潰瘍を生じ, 皮膚生検後著明に増悪し蜂窩織炎様となった。病理組織学的所見は急性期には真皮の密な好酸球浸潤を, また軽快期には真皮膠原線維の変性および好酸性顆粒状物質の沈着を認めた。検査所見では末梢血·骨髄中の好酸球の増加および肝機能障害と, 腹部超音波検査にて多発する低エコー領域を認めた。プレドニゾロン40mg/dayの内服に反応せず, メチルプレドニゾロン500mg/dayによるミニパルス療法にて皮疹, 肝症状ともに軽快した。他臓器障害を伴ったことから, hypereosinophilic syndromeなどとの鑑別が問題となると思われたが, 特徴的な病理組織学的所見よりeosinophilic cellulitisと診断した。
  • 川内 康弘, 額賀 祐美, 星野 稔, 岩田 充, 大塚 藤男
    1995 年 57 巻 2 号 p. 247-250
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    シクロスポリンは皮膚科領域では乾癬に保険適用されているほか, 天疱瘡, 類天疱瘡などの水疱症に対してもプレドニゾロンと併用投与することにより優れた臨床効果が認められている。その副作用として重要なものは腎障害, 肝障害, 高血圧などであるが, シクロスポリンが重篤な耐糖能障害を引き起こし得ることは皮膚科領域においては意外に知られていない。今回われわれはプレドニゾロン大量単独投与(1mg/kg/day)に抵抗した水疱性類天疱瘡に対してシクロスポリンを併用投与(5mg/kg/day)し, 併用開始後10日目から急激な血糖値の上昇をきたした症例を経験した。同時期のシクロスポリン血中トラフレベルは669ng/mlと異常高値であり, また尿中C-ペプチド排泄量は低値を示し, 本症例における糖尿病の発症はステロイド糖尿病ではなく, シクロスポリンのラ氏島β細胞障害により引き起こされたと推測した。シクロスポリンによる糖尿病は, 不可逆性のインスリン依存性糖尿病となる可能性が高く, とくにステロイドとシクロスポリンを併用投与するさいには血糖値, 尿糖値の注意深い観察が必要と考えた。
  • —症例報告とその免疫組織化学的所見について—
    伊藤 みさ子, 梅林 芳弘, 立石 毅, 大塚 藤男
    1995 年 57 巻 2 号 p. 251-254
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    Hidradenoma papilliferumは中年女性の外陰部に好発するアポクリン汗器官由来の良性腫瘍で, 本邦皮膚科領域での報告は比較的まれである。われわれは43歳の女性の外陰部に生じた本症の1例を経験したのでこれを報告し, その免疫組織化学的所見について考察を加えた。
  • 桐原 義信, 村田 宏爾, 安田 浩, 中山 管一郎, 末永 義則, 旭 正一
    1995 年 57 巻 2 号 p. 255-258
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    54歳の男性。右下腹部に生じたアポクリン腺癌の1例を報告した。約15年前より右下腹部に皮下結節を触れるようになり, 5年前より同部に紅色皮疹が出現してきた。初診時には32×24mmの局面および同部皮下に弾性硬の結節を数個触れた。病理組織学的所見では真皮全層から皮下脂肪織上層にかけて, 管腔様構造をとる腫瘍細胞が増殖していた。腫瘍細胞は異型性に乏しいが腺腔形成が目立ち, 一部に断頭分泌を認めた。酵素組織化学所見では酸フォスファスターゼ·β-グルクロニダーゼともに強陽性で, 免疫組織化学的所見ではCEA陽性, S-100蛋白は陰性を示した。
  • —本邦報告例のまとめ—
    前川 嘉洋, 野上 玲子
    1995 年 57 巻 2 号 p. 259-263
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    75歳の男性の背部に生じた悪性黒色腫と, 術後2年目に食道癌, 更に4年後に前立腺癌を合併し死亡した例を報告した。悪性黒色腫は幼少時期より黒色斑があり, 同部より生じ, 切除手術から半年後に腋窩リンパ節への転移巣がみられた。術後BCG内服とDTIC, ACNUとvincristineによるcombined chemotherapyを施行した。本邦における悪性黒色腫と他の悪性腫瘍の合併は27例の報告があり, 年齢は25歳より80歳におよび, 男性が18例, 女性8例(1例不明)で圧倒的に男性に多かった。悪性黒色腫の発生部位は皮膚原発が80.8%, その他19.2%(食道2, 口蓋1, 眼1, 子宮頚部1)であった。合併した悪性腫瘍は消化器系が34.2%で最も多く, 皮膚癌は22.0%(9例)で2番目に多い癌であった。
  • 清水 隆弘, 武藤 正彦, 古元 礼子, 廣田 徹, 麻上 千鳥
    1995 年 57 巻 2 号 p. 264-267
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    22歳の男性に生じた隆起性皮膚線維肉腫の1例を報告した。初診時(20歳), 左下腹部の小児手拳大の局面内に小豆大の皮下結節が多発。病理組織学的に, 真皮中層から脂肪織にかけて線維芽細胞様の細胞の増殖がみられたが, 細胞の異型性はみられず経過観察。2年後(22歳), 左下腹部の結節に強い圧痛を自覚するようになり切除目的で当科入院。病理組織学的に結節はcellularityが増加, 腫瘍細胞に軽度の異型性を認めた。
  • —2症例の報告と, 教室例の統計—
    立石 毅, 梅林 芳弘, 高橋 久恵, 大塚 藤男
    1995 年 57 巻 2 号 p. 268-271
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    症例1は1歳の男児。生後1週に左下腿に紅色の皮疹が出現し, 同部位に小水疱形成を繰り返していた。症例2は5ヵ月の女児。生後3ヵ月に右胸部に水疱形成を繰り返す皮疹が出現。いずれもダリエー徴候陽性。組織学的に真皮内に肥満細胞の増殖を認め, 単発性肥満細胞症と診断した。局所ステロイド剤外用にて水疱形成は抑制された。筑波大学皮膚科における1976年10月より1993年7月までの外来初診患者数47849人に対して, 肥満細胞症患者は10人で0.02%にあたる。単発性肥満細胞症はその中で2例(0.002%)のみであった。
  • 篠田 英和, 西本 勝太郎, 本間 喜蔵
    1995 年 57 巻 2 号 p. 272-277
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    1診療所において10年間(1984年7月∼1994年6月)に経験した陰嚢白癬の11例について検討した。年齢別では11ヵ月から3歳までの小児群6例と, 50歳代1例, 60歳代3例, 70歳代1例の成人群5例であった。臨床症状は小児群においては従来の報告と同様すべて辺縁隆起性(環状)紅斑を示した。一方, 成人群は2例が成人例の特徴である瀰漫性落屑性紅斑であったが, 残り3例は辺縁隆起性(環状)紅斑を示した。他部位白癬の有無では5例が股部白癬を併発し, 陰嚢白癬病巣と連続していた。残り6例は陰嚢原発と考えられ, うち小児例は5例であった。原因菌はTrichophyton (T) rubrum 9例, Microsporum (M) gypseum 1例, 不明1例であった。M. gypseumによる陰嚢白癬は3歳の小児例であり, 陰嚢原発であった。また1患児宅の土壌よりhair-baiting法によりM. gypseumを分離した。成人の陰嚢白癬は股部白癬との合併が多く, 股部白癬の診察時には陰嚢に対してもKOH検査を含む積極的な観察が重要と考えた。
  • 益雪 浩一, 桐原 義信, 安田 浩, 末永 義則
    1995 年 57 巻 2 号 p. 278-280
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    患者は36歳の女性。帝王切開後の腹壁瘢痕内の有痛性結節を主訴として来院した。病理組織学的には, 膠原線維間に一層の円柱上皮からなる多数の腺腔様構造と, その周囲をとりまく細胞成分に富む間質が認められ, 子宮内膜症の所見に一致するものであった。本症の報告はまれであるが, 子宮内操作を既往にもつ症例では念頭に置く必要があると思われた。
研究
  • 徳橋 至, 橋爪 鈴男, 高桑 俊文
    1995 年 57 巻 2 号 p. 281-285
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    乳房Paget病において癌遺伝子の異常を調べるために2種類の癌遺伝子産物について免疫組織化学的染色を施行して検討した。症例は6例で使用した抗体は癌遺伝子であるc-erbB-2およびp53のそれぞれの遺伝子産物を認識する。c-erbB-2においては6症例すべてにおいて腫瘍細胞の細胞膜に強陽性で, p53に対しては6例中5例に腫瘍細胞の核に一致して陽性とそれぞれ高率に遺伝子産物の発現を認めた。これらの所見は以前に報告された乳癌全体における発現率よりも高率で興味のある所見である。表皮内癌である乳房Paget病においてこの2つの癌遺伝子に異常が認められることは癌化の初期から起きた変化と考えられ最近提唱されている多段階発癌(multi-step carcinogenesis)における複数遺伝子の変化の可能性を示したものと思われた。
  • 筒井 清広, 長谷川 稔
    1995 年 57 巻 2 号 p. 286-289
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    活動性のBehçet病患者16例を対象として, プロトロンビン時間(PT), フィブリノーゲン(Fbg), トロンビン·アンチトロンビンIII複合体(TAT), プラスミン·α2-プラスミンインヒビター複合体(PIC)を測定した。その結果PT延長が8例(50%)に, Fbg高値が10例(56%)に認められた。TATあるいはPICが異常高値を示した例は4例(25%)あり, 全例において大腿深部静脈の閉塞ないしは狭窄がRIベノグラフィーで検出された。血管病変が検出されなかった症例では, TATおよびPICはいずれも正常値を示した。以上の結果からTATおよびPICの測定はBehçet病患者における深部血管の血栓症の存在を示唆する指標として有用であると思われた。
講座
治療
  • 森 誠一, 水足 久美子, 影下 登志郎, 小野 友道
    1995 年 57 巻 2 号 p. 299-303
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    尋常性白斑に対してsuction blisterを用いて表皮移植術を行った群10例の治療終了約10年後の状態および満足度をその他の治療(主としてPUVA, 副腎皮質ステロイド外用)による群の約2∼11年後のそれと比較検討した。両群間で年齢, 病悩期間, 観察期間, 病型など背景因子に有意差を認めなかった。表皮移植術は10例中7例で有効で, 「ほぼ治癒」および「治癒」の症例は10例中5例あった。一方他の治療群ではそれぞれ15例中10例, 3例であった。病型別および初診時の拡大傾向の有無別に表皮移植群とその他の治療群を検討した結果, 表皮移植術は白斑拡大傾向がない症例やsegmental typeに対しては非常に有用であり, 術後の満足度は他の治療に比べ高いことがわかった。
  • 山田 元人, 伊藤 まゆみ, 松本 義也, 堀沢 明子
    1995 年 57 巻 2 号 p. 304-306
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    Microsporum canisによる5歳の女児のケルスス禿瘡にフルコナゾールを内服投与し治癒した1例を経験した。初診時にグリセオフルビンを投与したところ, 数日後に顔面から頸部にかけて紅斑が生じグリセオフルビンによる薬疹が疑われた。そのためフルコナゾール1日50mgを投与しケルスス禿瘡は3ヵ月後に治癒した。副作用は認められなかった。フルコナゾールはケルスス禿瘡に対して有用な内服薬と思われた。
  • 寺師 浩人, 村上 勇, 波多野 豊
    1995 年 57 巻 2 号 p. 307-310
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    67歳の男性の鼻背左側面に発生した基底細胞上皮腫を経験した。切除標本の組織型が通常のsolid typeでありながら筋肉内にも浸潤するいわゆるaggressive typeであったことより, 切除創面は外側鼻軟骨および鼻骨の露出する深さとなった。今回, その再建法にextended V-Y flapを使用し良好な結果を得た。われわれの考察では, この皮弁はV-Y flapの変法でありながら純粋なadvancement flapでなく, advancement-rotation flapであるという結論に達した。
  • 加賀美 潔, 松崎 ひろみ, 梶本 喜忠
    1995 年 57 巻 2 号 p. 311-314
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    1993年2月から9月までの8ヵ月間に京都第一赤十字病院皮膚科外来を受診したアトピー性皮膚炎10例, 皮脂欠乏性皮膚炎20例, 計30例(脱落例4例を除いた)の患者を対象に, ヒルドイド®(1g中ヘパリン類似物質3mgを含有するクリーム状軟膏)とザーネ®軟膏(1g中ビタミンA5000単位を含有する軟膏)を, 各々, 右と左の半身に厳密に塗り分けて両者の効果を比較した。期間は4週間で調査項目は乾燥, 鱗屑, そう痒, 紅斑, 表皮剥離と副作用である。評価判定は1週毎に行い, 皮膚症状を著明改善, 改善, やや改善, 不変, 悪化, 判定不能の6段階で左右別々に判定した。対象症例の背景はアトピー性皮膚炎では10∼30歳代男女各5名, 皮脂欠乏性皮膚炎では65歳以上13名, 65歳未満7名, 男9名, 女11名であった。全般改善度および有用性は, アトピー性皮膚炎では左右に有意差はなく, 皮脂欠乏性皮膚炎ではヒルドイド®に有意の優性が認められた。左右の優劣比較では優性はアトピー性皮膚炎においては有意差はなく, 皮脂欠乏性皮膚炎と全症例では右側のヒルドイド®に有意差が認められた。全症例の症状別改善度では, そう痒感の改善はヒルドイド®に優性が有意に認められたが, その他の症状では有意差は認められなかった。
  • —特に他剤無効例に対する塩酸アゼラスチンの有用性の検討—
    新見 やよい, 本田 光芳, 矢島 純, 畑 三恵子, 佐々木 映子, 新谷 眞理子, 米山 英子, 田宮 由美子, 北原 東一, 天野 薫 ...
    1995 年 57 巻 2 号 p. 315-324
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    日本医科大学付属病院皮膚科を受診し蕁麻疹, 湿疹·皮膚炎(アトピー性皮膚炎, 慢性湿疹, 紅皮症, 異汗性湿疹)と診断され, 塩酸アゼラスチン以外の抗アレルギー剤, 抗ヒスタミン剤にて治療したが無効と判断した27症例を対象に塩酸アゼラスチンの臨床効果を検討した。全症例の全般改善度は, 著明改善4例(14.8%), 改善9例(33.3%), やや改善6例(22.2%)であり, 改善以上48.1%と良好な結果が認められた。疾患別の全般改善度では, 蕁麻疹は改善以上54.6%, 湿疹·皮膚炎は改善以上43.8%であった。症状別重症度推移では, 蕁麻疹のそう痒が投与前高度36.4%, 中等度63.6%と全例中等度以上であったが, 最終投与時高度18.2%, 中等度9.1%まで減少した。発斑については投与前中等度72.7%が最終投与時18.2%まで減少した。また, 湿疹·皮膚炎では, そう痒が投与前高度87.5%, 中等度12.5%と全例中等度以上であったが, 最終投与時高度31.3%, 中等度25.0%まで減少した。紅斑については投与前高度62.5%, 中等度37.5%と全例が中等度以上であったが, 最終投与時高度25.0%, 中等度18.8%まで減少した。本試験において, 副作用は全例に認められなかった。以上より本剤はそう痒性皮膚疾患に対する高い有用性を有しており, 第一選択薬となり得る薬剤のひとつと考えられた。
  • KG-2413研究班
    1995 年 57 巻 2 号 p. 325-334
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    湿疹·皮膚炎群17例, 痒疹群13例および皮膚そう痒症12例の計42例を対象としてフマル酸エメダスチンの4mg/日, 長期投与による有効性, 安全性および有用性を検討した。最終全般改善度採用例は36例(湿疹·皮膚炎群15例, 痒疹群10例および皮膚そう痒症11例)であり, 概括安全度採用例および有用度採用例は, ともに39例(湿疹·皮膚炎群16例, 痒疹群11例および皮膚そう痒症12例)であった。概括安全度採用例の平均投与日数は37日間であり, 最長は93日間であった。最終全般改善度は「中等度改善」以上で湿疹·皮膚炎群73.3%(11/15), 痒疹群80.0%(8/10)および皮膚そう痒症72.7%(8/11)であった。概括安全度は「安全性に問題なし」で76.9%(30/39)であった。副作用は39例中9例(23.1%)に11件みられ, 症状は主に眠気7件(17.9%)であった。有用度は「有用」以上で湿疹·皮膚炎群56.3%(9/16), 痒疹群72.7%(8/11)および皮膚そう痒症66.7%(8/12)であった。以上の結果より, フマル酸エメダスチンは湿疹·皮膚炎群, 痒疹群および皮膚そう痒症に対して, 長期投与においても臨床的に有用性の高い薬剤であることが示唆された。
  • —とくにトリルダン®の止痒効果について—
    大河原 章, 高橋 誠, 飯塚 一
    1995 年 57 巻 2 号 p. 335-344
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    慢性蕁麻疹263例, 皮膚そう痒症53例を対象にトリルダン®単独投与の有用性およびアトピー性皮膚炎を含む湿疹·皮膚炎群554例を対象にトリルダン®とステロイド外用薬との併用療法の有用性を検討した。疾患別全般改善度では慢性蕁麻疹は改善以上が86.7%, 皮膚そう痒症は69.8%および湿疹·皮膚炎群は83.0%であった。副作用は判定対象となった1043例中4例(0.4%)にみられ, その内訳は眠気, めまい, 咽頭違和感, 便秘各1例であった。有用度は慢性蕁麻疹では有用以上86.7%, 皮膚そう痒症73.6%, 湿疹·皮膚炎群83.9%であった。以上より本剤は各種そう痒性皮膚疾患に対して有用性の高い治療薬と考えられた。
  • SNK-863九州地区研究班
    1995 年 57 巻 2 号 p. 345-356
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    創傷治療剤SNK-863軟膏はClostridium perfringensより製した細胞増殖促進作用を有する物質を含有する肉芽形成および表皮形成の促進を目的とした軟膏剤である。今回難治性皮膚潰瘍に対するSNK-863軟膏の長期間使用における有効性, 安全性を検討するため九州地区16施設で多施設共同のオープン試験を実施し, 次のような成績を得た。1)試験導入症例は65例で, 使用期間が4週(18日)未満の治癒症例4例, 中止症例3例を除外とし, 他の58例を解析対象とした。2)褥瘡(43.9%), 下腿潰瘍(14.0%)が主たる対象で, 高齢者(65歳以上)が約5割を占め, 重症および中等症例の難治性皮膚潰瘍が選択されていた。3)最終全般改善度の著明改善率は66.7%, 改善以上の改善率は78.9%であった。また解析対象症例58例中28例(48.3%)が治癒に至った。難治性皮膚潰瘍を対象としたにもかかわらず, 導入された症例の約半数が治癒に至ったことは, SNK-863軟膏の有効性を強く示唆する成績と考えられた。4)副作用については刺激感, 潰瘍周囲の発赤·疼痛, 潰瘍周囲の発赤·痒みを3例5件に認めたが, いずれも使用中止により消失した。全身性の副作用は発現せず, 使用部に発現した副作用は使用中止により消失したことから, SNK-863軟膏の安全性に問題がないと考えられた。以上の成績からSNK-863軟膏は難治性皮膚潰瘍に対して有用な治療薬であると考えられた。
  • 橋爪 鈴男, 窪田 泰夫, 溝口 昌子, 徳橋 至, 千葉 紀子, 岩田 博生, 松井 新, 森田 誠, 碇 優子, 鈴木 秀美, 山本 百 ...
    1995 年 57 巻 2 号 p. 357-365
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    オルセノン®軟膏はトレチノイントコフェリル(レチノイン酸とDL-α-トコフェロールがエステル結合した物質)を含有する乳剤性軟膏であり, 肉芽形成促進作用, 血管新生促進作用を有する。今回聖マリアンナ医科大学および6関連施設において, 褥瘡, 熱傷潰瘍, 下腿潰瘍, 糖尿病性潰瘍および難治性潰瘍の23症例に対してオルセノン軟膏を原則として6週間投与し, 有効性と安全性の検討を行った。その結果最終全般改善度において85%に改善以上の効果が得られ, 有用性判定では85%が有用と判断された。副作用は認められなかった。本剤は肉芽形成, 表皮形成および分泌物の軽減などの効果に優れ, 長期使用も可能であり, 各種の皮膚潰瘍に対して安全性の高い薬剤であると評価された。
  • 森田 明理, 辻 卓夫
    1995 年 57 巻 2 号 p. 366-370
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    塩酸アゼラスチンを汎発性強皮症(SSc)7例に投与し, 皮膚の浮腫, 硬化, そう痒感, レイノー症状, 関節痛, 関節可動域, 消化器症状, 肺機能に対する効果を検討した。皮膚そう痒感では全例で改善以上, レイノー症状では投与前に症状のみられた4例で改善以上, 関節痛では症状のみられた2例で改善以上, 浮腫では半数の症例で改善以上の結果が得られた。消化器症状, 硬化は1例で改善がみられた。関節可動域, 肺機能は不変であった。以上の結果から本剤はSScに対して試みる価値のある薬剤であると考えられた。
  • —サーモグラフィーによる検討—
    清原 隆宏, 熊切 正信, 大河原 章
    1995 年 57 巻 2 号 p. 371-374
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    Raynaud現象を有する膠原病患者を対象に, ミオナール®の効果をサーモグラフィーを用いて検討した。症例は7例でミオナール®150mg/day(1回50mgを1日3回)を経口投与した。ミオナール®投与後の平均皮膚表面温度に有意な上昇がみられた。また平均皮膚表面温度回復率において, 冷水負荷6分後および12分後の回復率に軽度の改善がみられた。以上より膠原病を始めとする末梢循環障害によるRaynaud現象に対する本剤の有用性が期待された。
  • 松本 忠彦
    1995 年 57 巻 2 号 p. 375-378
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    トシル酸トスフロキサシン錠(tosufloxacin tosilate; TFLX; 市販名トスキサシン)を膿疱性ざ瘡, 嚢腫性ざ瘡および集簇性ざ瘡の患者20例に投与し, 臨床効果と安全性について検討した。その結果, 著明改善, 改善あわせて75%; 50.9%∼91.3%の有効率と57.9%∼90.0%の臨床所見の改善が認められた。細菌学的には起炎菌と考えられた細菌は治療後93.1%消失し, 有用率(「きわめて有用」および「有用」)は70.0%であった。副作用は認められなかった。以上より, トシル酸トスフロキサシン錠は膿疱性ざ瘡および集簇性ざ瘡に対して有用性の高い抗菌剤のひとつであると考えられる。
  • 松浦 恭子, 松島 勇治, 田中 克也
    1995 年 57 巻 2 号 p. 379-381
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    リンパ管型スポロトリコーシスの2症例に対してイトラコナゾールを投与したところ著効を得た。従来よりリンパ管型スポロトリコーシスの治療の第一選択とされているヨウ化カリウムと同様に, イトラコナゾールの内服も今後試みるべき治療であると考えられた。
  • 加藤 卓朗, 角田 明子, 丸山 隆児, 西岡 清
    1995 年 57 巻 2 号 p. 382-388
    発行日: 1995/04/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    外用抗真菌剤であるケトコナゾール(KCZ)クリームを脂漏性皮膚炎患者29例に使用し, その臨床的および真菌学的効果を検討した。29例中4例はすべての評価より除外され, 1例は安全性, 有用性の評価のみ採用となり, また1例は安全性評価のみ採用となった。従って有効性評価対象例は23例, 有用性評価対象例は24例, 安全性評価対象例は25例となった。最終全般改善度は治癒10例(43.5%), 著明改善7例(累積: 73.9%), 改善2例(累積: 82.6%)であった。真菌学的効果(培養)については消失16例(69.6%), 減少7例(累積: 100%)と優れた成績が得られた。また, 副作用は3例に認められたが, いずれも既知の軽度な皮膚症状であった。本症の病因には諸説あり明確ではないが, 欧米においてはPityrosporumによる感染説が注目されており, 感染説を裏付ける報告も数多くある。本症の一般的な治療薬である外用ステロイド剤は副作用の点で問題を有していることからも, 本剤は脂漏性皮膚炎に対する新たな治療法として充分評価できると結論した。
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