1996 年 58 巻 4 号 p. 649-653
長崎市の一皮膚科開業施設今福皮膚科医院における1985年1月から1994年12月に至る10年間の白癬患者統計および白癬菌培養成績について述べた。同期間における白癬患者の新患数は6, 038名で外来新患総数に対する割合は11.1%であった。病型別では足白癬が4,601例(76.2%)と最も多く次に体部白癬605例(10.0%), 爪白癬378例(6.3%), 陰股部白癬314例(5.2%), 手白癬126例(2.1%), 以下頭部白癬10例, 陰嚢白癬2例, 白癬性毛瘡2例の順であった。10年間の全分離白癬菌株数は4,019株, 内訳はTrichophyton rubrum 2,305株(57.4%), Trichophyton mentagrophytes 1,619株(40.3%), Microsporum canis 61株(1.5%)でその他にEpidermophyton floccosum, Trichophyton glabrum, Microsporum gypseum, Trichophyton violaceumがそれぞれ8, 8, 3, 2株であった。T. rubrumとT. mentagrophytesの比は全白癬では1.42であったが足白癬のみでは0.92であった。長崎市の10年間の各月の平均気温と湿度を足白癬のT. rubrumとT. mentagrophytesの月別分離数と対比してみるとT. mentagrophytesはT. rubrumよりも湿度の変化に, より敏感に反応した。夏期にT. mentagrophytesが急増急減するのは, これがT. rubrumよりも湿度依存性が高いことによるものと推論した。