西日本皮膚科
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治療
膠原病患者における振動覚閾値と自覚症状に対するリポPGE1製剤の効果
前田 学可知 久代市橋 直樹高木 肇北島 康雄中島 智子
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1997 年 59 巻 1 号 p. 126-132

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抄録

全身性強皮症(PSS)や他の膠原病患者には冷感やしびれ感など各種の不定愁訴を伴うが, その背景に振動覚や末梢神経学的異常が存在するか否かは不明のままである。岐阜大学医学部附属病院皮膚科で診断·治療中のPSS 53例(Barnett I型; 32, II型; 13, III型; 8例), 全身性エリテマトーデス(SLE)·皮膚筋炎13例, シェーグレン症候群を伴うPSS非典型例26例および健常人20例の計112例に対して, リポPGE1製剤(以下PGE1)が各種の自覚症状に有効か否かを検討する目的で投与前後の振動覚閾値を追跡し, かつ朝の手のこわばり, 疼痛(関節痛), しびれ感, 知覚鈍麻, 冷感, 熱感の計6項目の自覚症状を重症度別に点数化しおのおのの改善状態を検討した。PGE1投与群では点数減少(改善)例が66%, 不変例が21%, 増加(悪化)例が13%で一方, 非投与群では改善例が35%, 不変例が49%, 悪化例が16%であった。PGE1投与12ヵ月後の各自覚症状の平均点数の推移は非投与群に比べ有意差はなかったが, しびれ感と冷感は改善傾向が認められた。初回, 6ヵ月後, 12ヵ月後に各自覚症状の重症度の推移を検討したところ, PGE1非投与群ではどの自覚症状も重症度の変化は有意ではなかった。一方PGE1投与群のPSS(Barnett III型)患者では投与前は8例中4例がしびれ感なしで軽微と軽度が各2例存在したが, 投与1年後には全例しびれ感なしとなり症状の有無別で比較すると投与群と非投与群間に有意差がみられた。一方, 振動覚閾値はPGE1投与群と非投与群で初回, 6ヵ月後, 12ヵ月後の3回測定し比較·検討したが, どのタイプのPSSも有意差はなかった。以上より, しびれ感や冷感の重症例に対してPGE1を試みる価値はあると考えられた。

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© 1997 日本皮膚科学会西部支部
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