1997 年 59 巻 1 号 p. 37-40
40歳の男性。自覚症状のない左肩甲骨部の示指頭大の皮下結節を主訴に来院した。病理組織学的に線維性偽被膜に囲まれた境界明瞭な腫瘍で内部は結合織により数個に分葉していた。腫瘍細胞は細胞質に乏しく好塩基性, 楕円形で大型の核をもつ比較的未分化なbasaloid cellであった。Primary epithelial germ様の蕾状の突起もみられたが完全な毛包の形成はなく自験例をtrichoblastic fibromaと診断した。各種抗サイトケラチン抗体を用いた免疫組織化学染色を行ったところ, その上皮性腫瘍細胞とbulge areaのケラチン染色パターンが一致した。これまで言われているようにtrichoblastic fibromaは毛芽細胞へ分化していることが示唆された。