西日本皮膚科
Online ISSN : 1880-4047
Print ISSN : 0386-9784
ISSN-L : 0386-9784
症例
線状苔癬
—その病理組織学的検討—
水野 尚石井 則久中嶋 弘
著者情報
ジャーナル 認証あり

1997 年 59 巻 6 号 p. 832-834

詳細
抄録

14歳の男子。左膝窩部に皮疹が出現し, 以後左下肢屈側, 左臀部および左第2趾間に線状, 飛び石状に拡大した。個々の皮疹は径10∼30mmのほぼ円形の, 痂皮を伴う紅斑で軽度のそう痒を伴っていた。病理組織学的には, 顆粒層の減少を伴う不全角化, 表皮突起の延長などが認められ, 角層内にはムンローの微小膿瘍も確認された。真皮浅層では血管周囲性に軽度の細胞浸潤を認めた。以上より線状乾癬, 線状苔癬, 線状扁平苔癬を鑑別した。しかし線状乾癬は, その存在自体が疑問視されており純粋な線状乾癬と思われる報告例は極めて少なく, またその報告例では皮疹の範囲は広汎であること, 本症例では外用療法により軽快傾向を認め, 再発がみられないことなどから否定的と考えた。線状扁平苔癬と線状苔癬については本症例が若年発症であること, 真皮細胞浸潤様式が血管周囲性であること, 線状苔癬は多彩な組織像を示し, 乾癬に類似するものもあることなどから線状苔癬と診断することがより妥当であると考えた。線状苔癬の鑑別診断には臨床像と病理組織像を合わせた総合的な判断が必要と考えた。

著者関連情報
© 1997 日本皮膚科学会西部支部
前の記事 次の記事
feedback
Top