抄録
症例1(陰茎結核疹): 44歳の男性。結核の既往はない。陰茎冠状溝に半小指頭大の潰瘍とその皮下に大豆大の硬結を認めた。ツ反は強陽性。他臓器に結核病巣はない。真皮全層に乾酪壊死を伴う類上皮細胞性肉芽腫。抗酸菌染色,polymerase chain reaction(PCR)法での結核菌DNAは陰性。ミノサイクリンの内服にてわずかに瘢痕を残し上皮化した。症例2(バザン硬結性紅斑): 57歳の男性。陳旧性肺結核あり。両側下腿に鳩卵大までの浸潤を触れる紅斑,痂皮をつけたやや深い潰瘍が散在している。右下腿外側と左下腿屈側皮下から筋肉内に手掌大の皮下硬結を認めた。いずれも自覚症状は少ない。ツ反は強陽性。真皮中層から脂肪織に類上皮細胞性の肉芽腫形成とリンパ球浸潤。小血管壁では,リンパ球及び類上皮細胞の浸潤や,血管壁の肥厚がみられた。イソニアジド,リファンピシンの2剤併用療法にて上皮化,皮下硬結も消退した。抗酸菌染色,抗酸菌培養,PCR法による結核菌DNAは陰性。真性皮膚結核,結核疹でのPCR法による結核菌DNA検出の本邦報告例に関する考察を含めて報告した。