抄録
最近interleukin-2(IL-2)の血管肉腫に対する抗腫瘍効果が注目されているが, IL-2療法を施行し,その効果について免疫組織化学的に検討した83歳の女性のStewart-Treves症候群の1例を報告した。初診の18年前,右乳癌にて定型的乳房切断術を施行され,術後放射線治療を受けた。その後右上肢に慢性リンパ浮腫の状態が続いていた。3ヵ月前,右上腕に淡紅色局面が出現,徐々に増大し水疱様となった。Stewart-Treves症候群の診断にて1997年8月入院後IL-2を1日量70万~140万国内標準単位にて連日28日間静注および局注施行後局所切除術を行った。術後IL-2療法を再開したが,右前腕に初発時と同様な結節が出現した。一時退院し,外来にてIL-2療法を続行した。結節は増大し,疼痛も伴う様になってきたため,1998年2月再入院した。その後も腫瘍は進行し,肺転移も出現した。初発から11ヵ月後の1998年5月永眠された。免疫組織化学的にはNK細胞の浸潤は認められず,治療前に比べてCD 8陽性細胞の増加およびMAC 387陽性細胞の減少が目立つという結果が得られた。同様の報告は過去にもあり,IL-2療法後のNK細胞およびCD 8陽性細胞の動態については今後の検討が必要と思われた。また本症例では治療後CD 20陽性細胞の増加がみられたが過去にこのような報告例は無く,興味深い所見と思われた。