2001 年 63 巻 4 号 p. 398-402
原発巣が完全及び部分消退を示し,病勢が急速に進行した悪性黒色腫2例を報告した。症例1は51歳の男性。交通事故のため頭部CT施行時,多発性転移性病変が指摘され,右下腿色素性斑が原発巣と判明した。1ヵ月後,全身転移で死亡した。症例2は73歳の女性。20歳頃から存在している腰部色素斑の一部が6ヵ月前に白斑となり,その後腫瘤を形成した。すでにリンパ節転移があった。2例とも原発巣に強いT細胞浸潤がみられたが,転移巣には認められなかった。また,メラノーマ抗原やHLA class I抗原の発現が低下していた。強い免疫能があるにもかかわらず予後不良であることはHammond効果と考えられるが,その本体は免疫エスケープ現象と考える。