西日本皮膚科
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63 巻, 4 号
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図説
綜説
症例
  • 榎本 久子, 市川 栄子, 今門 純久, 大塚 藤男, 佐藤 大介, 向井 陽美
    2001 年 63 巻 4 号 p. 368-370
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    症例は77歳の女性。発熱などの前駆症状はなく,初診の約4ヵ月前より頚部,両前腕から手背に軽度の痛みと熱感を伴う浸潤性紅斑が出現し,新生と消退を繰り返していた。ステロイド外用剤では改善せず,当科を受診した。生検組織像は,真皮中層から下層にかけての密な好中球の浸潤と浮腫であり,Sweet病と診断した。血液検査上,血沈高度亢進,総蛋白上昇, IgA(λ)type M蛋白を認めた。頭蓋骨に打ち抜き像があり,骨髄では形質細胞が27%と上昇し,IgA骨髄腫の合併が判明した。骨髄腫に対する化学療法は患者が拒否したため行っていないが,皮疹に対してロキソプロフェンナトリウム(ロキソニン®)内服が奏効した。多発性骨髄腫を伴うSweet病と,その他の血液疾患を伴うSweet病の臨床像の特徴を文献例について解析すると,前者は,後者よりも,Sweet病の特徴とされている発熱,白血球上昇などの所見を示さない例が多かった。血液疾患を伴うSweet病は,非典型的な臨床像を呈することが多いと知られているが,多発性骨髄腫を伴うSweet病では,典型的な所見を示すことがさらに少なく,皮疹を見逃さないことが大切であると考えた。
  • 弓削 真由美, 高田 香織, 五十嵐 司, 青木 見佳子, 川名 誠司
    2001 年 63 巻 4 号 p. 371-374
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    症例:50歳,男性。1週間前より,発熱,口腔内アフタ,略全身に毛嚢炎様皮疹が出現。白血球増加,CRP上昇,血沈充進を伴い,セフェム系抗生剤,非ステロイド系消炎鎮痛剤を投与したが改善しなかった。その後,外陰部潰瘍,下肢の結節性紅斑,四肢の関節症状,腹痛,下痢の消化器症状が出現し,不全型べーチェット病と診断した。プレドニゾロン1日20mgとミノマイシンの内服にて軽快。1ヵ月後に中止し,その後,非ステロイド系消炎鎮痛剤の内服にてコントロール良好である。べーチェット病は多彩な症状を呈しながら慢性再発性に経過することが多く,自験例のように急性に発症し,眼症状以外の主要症状がほぼ同時期に出現するものは少ないと思われる。
  • 山口 隆広, 清水 昭彦, 久保田 由美子, 桐生 美麿, 中山 樹一郎
    2001 年 63 巻 4 号 p. 375-378
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/09/02
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    27歳,女性。1999年2月に両前腕と下腿の腫脹,手指関節の屈曲制限及び手背の硬化が出現。その後,両足関節,膝関節も屈曲時,異和感を認める様になった。採血にて末梢血好酸球数,血清アルドラーゼが高値を示した。病理組織学的には肥厚,線維化した筋膜にリンパ球,形質細胞を中心とした炎症細胞浸潤を認め好酸球も散見された。好酸球性筋膜炎と診断し,プレドニゾロン(以下PSLと略)内服にて速やかに臨床症状,検査値の改善を認め,内服終了後も症状の再燃を認めていない。
  • 凌 太郎, 平島 徳幸, 大神 英一, 長藤 宏司, 三砂 範幸, 成澤 寛
    2001 年 63 巻 4 号 p. 379-383
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/09/02
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    66歳,男性。1996年7月,真性多血症に対してhydroxyurea内服を開始した。1998年7月頃より左外踝部に潰瘍が出現したため,保存的治療を行っていたが,右外踝部および両足背部にも拡大した。病理組織学的には血管内皮細胞の膨化·フィブリンの沈着を認め,蛍光抗体直接法では血管壁にIgM沈着を認めた。Hydroxyurea投与を中止したところ,潰瘍面の良好な肉芽形成および周囲からの上皮化を認めた。
  • 平島 徳幸, 凌 太郎, 坂下 直, 成澤 寛
    2001 年 63 巻 4 号 p. 384-386
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/09/02
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    78歳の男性。前立腺癌に対して,酢酸リュープロレリン(商品名:リュープリン®)の皮下注射を定期的に行われていた。腹部や臀部の注射部位に紅斑,硬結,膿瘍,潰瘍を繰り返すため,当科を受診した。臨床および組織学的所見や経過から,酢酸リュープロレリンによる皮膚障害と診断した。本剤の投与中止により,再発を認めない。原因として,薬剤中にvehicleとして含まれる乳酸-グリコール酸共重合体に対する異物反応が考えられた。
  • 小森 一哉, 湊原 一哉, 松永 剛
    2001 年 63 巻 4 号 p. 387-390
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/09/02
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    症例は31歳の女性。1994年ごろより両手背の外傷の治癒が遅いという自覚症状が出現。1997年1月当科初診。顔面,両手背の色素沈着を伴う瘢痕および右手背の水疱を認め,水疱部の生検では表皮下水疱,真皮血管周囲へのPAS陽性物質の沈着を認めた。尿中ポルフィリン体のコプロポルフィリン優位の増加,血中δアミノレブリン酸の高値を2度の検査にて確認した。便中のコプロポルフィリンおよびプロトポルフィリンの高値を認め,異型ポルフィリン症と診断した。皮膚科領域においては本邦では4例目の報告であり,皮膚症状のみを呈した症例としては本邦で第一例目の報告である。
  • 能美 晶子, 葉狩 良孝, 三原 基之
    2001 年 63 巻 4 号 p. 391-394
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    74歳,男性。初診の約3年前より上半身を中心にそう痒を伴う褐色斑を生じた。褐色斑は徐々に増加して紫斑,水疱,血疱を伴うようになった。褐色斑より生検し,真皮上層にダイロン染色で橙赤色調を呈する物質を認めた。この物質は電顕にてstraight nonbranching filamentsよりなるアミロイドであることが確認され,免疫組織化学にてλ鎖由来アミロイド蛋白を抗原とした抗血清に陽性を示した。免疫電気泳動にてλ型Bence Jones蛋白および血清IgA-λ型M蛋白を認めた。骨髄穿刺ではplasma cellは7.6%と軽度上昇していたが,異型性は軽度であった。上部消化管生検でもアミロイドの沈着を認めた。以上より本症例を原発性アミロイドーシスと診断した。強いそう痒が持続したためUVBの照射を試みたところ,そう痒は著明に減少した。
  • 山田 元人, 小川 靖, 柴田 真一, 榊原 章浩, 富田 靖, 田所 匡典
    2001 年 63 巻 4 号 p. 395-397
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/09/02
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    62歳女性の右足底に生じたtumor thickness 1 mmの悪性黒色腫の1例を経験した。術前に行ったlymphoscintigraphyでは右鼠径と膝窩にsentinel nodeが存在すると考えられた。術中blue dyeを用いてsentinel node biopsyを行ったところ,右鼠径と膝窩にそれぞれ1個のsentinel nodeを認めた。これらには組織学的に転移は認められなかった。原発腫瘍が下腿以下にある場合sentinel nodeは膝窩にも存在することもあり,術前にlymphoscintigraphyを行いsentinel nodeの位置を確認する必要があると思われた。
  • —Hammond効果のメカニズムの検討—
    境 恵祐, 影下 登志郎, 石原 剛, 三角 修子, 牧野 貴充, 小野 友道
    2001 年 63 巻 4 号 p. 398-402
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    原発巣が完全及び部分消退を示し,病勢が急速に進行した悪性黒色腫2例を報告した。症例1は51歳の男性。交通事故のため頭部CT施行時,多発性転移性病変が指摘され,右下腿色素性斑が原発巣と判明した。1ヵ月後,全身転移で死亡した。症例2は73歳の女性。20歳頃から存在している腰部色素斑の一部が6ヵ月前に白斑となり,その後腫瘤を形成した。すでにリンパ節転移があった。2例とも原発巣に強いT細胞浸潤がみられたが,転移巣には認められなかった。また,メラノーマ抗原やHLA class I抗原の発現が低下していた。強い免疫能があるにもかかわらず予後不良であることはHammond効果と考えられるが,その本体は免疫エスケープ現象と考える。
  • —皮疹出現後の治療反応性の多様性について—
    村上 かおり, 末木 博彦, 飯島 正文, 友安 茂, 槇 政彦, 塩川 章, 太田 秀一
    2001 年 63 巻 4 号 p. 403-410
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    症例1: 43歳,男性。縦隔原発のnon-Hodgkin’s lymphoma(以下NHL;precursor T-lymphoblastic)。躯幹に大豆大,暗紅色の浸潤性紅斑が多発。症例2: 65歳,男性。頚部リンパ節原発のNHL(peripheral T cell)。顔面,頚部に小指頭大,暗紅色の皮内結節が多発。症例3: 55歳,男性。右精巣原発のNHL(diffuse large B cell)。胸部に示指頭大,淡紅色の浸潤性紅斑と皮内結節が多発。症例4: 70歳,男性。右精巣原発のNHL(diffuse large B cell)。両下腿に拇指頭大,暗紅色の皮内結節が多発。組織はいずれも真皮全層に原発巣と同様の形態と同一の表面マーカーを発現するlymphoma cellが結節状~びまん性に浸潤,増殖。続発性皮膚リンパ腫と診断。症例1, 2は多剤併用化学療法により皮疹の消退傾向がみられたが,多臓器浸潤を伴い,皮疹出現より8ヵ月以内に死亡。症例3, 4は化学療法に対する原発巣や皮疹の反応は良好であり,症例1, 2と比較すると長い経過であった。4例を報告し,特に皮疹出現後の治療反応性における多様性について考察を加えた。
  • 阿部 陽子, 鵜殿 雅子, 堀 真, 片山 一朗
    2001 年 63 巻 4 号 p. 411-414
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    80歳の女性。18年の経過中にmalignant fibrous histiocytomaが多発し, dermatofibrosarcoma protuberansも合併した症例を報告した。当科初診の18年前,右膝の皮下腫瘤を近医で切除されている。1997年2月,当科初診時には左大腿および背部に腫瘤が認められた。組織学的に右膝および左大腿皮下腫瘤はmalignant fibrous histiocytoma,背部腫瘤はdermatofibrosarcoma protuberansと診断した。いずれも全摘した。右膝腫瘤と左大腿腫瘤の関係は,遠隔転移よりむしろ2個の原発巣があるものと考えた。これまでmalignant fibrous histiocytomaおよびdermatofibrosarcoma protuberansが多発した報告はなかった。
  • 久保田 由美子, 力久 航, 桐生 美麿, 中山 樹一郎
    2001 年 63 巻 4 号 p. 415-420
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    35歳の女性。初診の4年前,第2子出産後頃より,顔面,背部に自覚症状のない径1cmまでの赤褐色斑が数個出現。7ヵ月後第3子妊娠中に発熱,全身倦怠感を伴うようになり,炎症所見(CRP上昇,血沈促進),ポリクローナルな高γグロブリン血症,頚部リンパ節腫脹,脾腫を指摘された。内科入院の上,膠原病,感染症を疑われ諸検査を受けるも確定診断がつかず,不明熱として経過観察されていた。2000年10月,炎症所見と全身症状の増悪,貧血の進行,皮疹が増大,増数するため当科受診。背部の皮疹の存在と,腋窩リンパ節の生検でポリクローナルな形質細胞の増殖と高インターロイキン(IL)-6血症を認めたことより,systemic plasmacytosis(SP)と診断。現在,プレドニゾロンの中等量全身投与を行っているが,解熱し,CRPがやや減少した程度で,著明な効果はない。今後,ヒト型化抗IL-6レセプター抗体投与を検討中である。SPは特徴的な皮疹と全身性のリンパ節腫脹が特徴で,内科領域ではCastleman’s disease(CD)といわれ,リンパ節腫大の多発するmulticentric CDと近縁な疾患と思われる。
  • 木村 裕, 角田 孝彦, 佐藤 紀嗣, 工藤 和浩, 飯島 茂子
    2001 年 63 巻 4 号 p. 421-423
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    東日本の皮膚科4施設でテルビナフィンに抵抗性のカンジダ症8例を経験した。白癬に対しテルビナフィンを内服していた6例で指間カンジダ症や陰部カンジダ症を生じた。また指間カンジダ症と肛囲カンジダ症の各1例でテルビナフィンを外用したが難治だった。これらのカンジダ症は,イミダゾール系の抗真菌剤を外用することにより改善した。山形市立病院済生館と水戸済生会総合病院の計6例でカンジダに対するMICを測定したところ50から100μg/ml以上であった。上記のテルビナフィン抵抗性カンジダ症は,山形市立病院済生館のテルビナフィン内服例の約10%にみられた。
  • 柴田 真里, 渡辺 秀晃, 末木 博彦, 飯島 正文
    2001 年 63 巻 4 号 p. 424-427
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    57歳,男性。13年前にアルコール性肝硬変と診断。初診前日に38.5度の熱発と左肩に有痛性の発赤·腫脹が出現し,1999年7月8日ショック状態で入院。両下肢に紫斑および中枢側に向かう有痛性の帯状鮮紅色紅斑が認められ,左上腕·右下腿に水疱を伴っていた。Vibrio unlnificusによる壊死性筋膜炎を疑い,ミノサイクリン·パニペネムの点滴静注を開始し,入院5時間後にデブリドマンを施行したが,入院第3病日目に死亡。水疱,便および動脈血より同菌を検出した。病理組織学的には,血管のフィブリノイド壊死と筋膜上で水平方向に拡大する著明な好中球浸潤がみられ,一部筋線維束内にも細胞浸潤が認められた。問診上,発症前に海産物生食の既往は明らかではなかった。
  • 細川 裕子, 森田 明理, 辻 卓夫
    2001 年 63 巻 4 号 p. 428-430
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    63歳。女性。乾癬の既往なし。糖尿病性網膜症の手術後,アスポキシシリンの点滴が行われた。その2日後より,全身に浮腫性紅斑·膿疱が出現した。点滴は3日間で終了し,続いてアンピシリン·クロキサシリンナトリウム合剤にきりかえたが,この日より39度台の熱発をおこし,皮疹がさらに悪化した。薬疹を疑い,アンピシリン·クロキサシリンナトリウム合剤内服を中止し,抗ヒスタミン剤内服を開始したところ約2週間で皮疹は消退した。パッチテストではアスポキシシリンは陰性,アンピシリン·クロキサシリンナトリウム合剤は陽性であったが,DLSTでは両薬剤とも陽性であった。臨床経過,検査結果より,上記ペニシリン系抗生剤(アスポキシシリン,アンピシリン·クロキサシリンナトリウム合剤)による膿疱型薬疹と診断した。
研究
  • 前田 尚子, 村上 義之, 熊澤 智子, 竹内 聡, 占部 和敬, 古賀 哲也, 古江 増隆, 永江 祥之介, 前原 喜彦
    2001 年 63 巻 4 号 p. 431-437
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    当科では1985年から1998年の14年間に90例の皮膚悪性腫瘍に計19種類の抗癌剤に対する抗癌剤感受性試験をsuccinate dehydrogenase inhibition(SDI)法により施行した。全90例におけるSDI法の評価可能例は84/90例,squamous cell carcinoma(SCC)の評価可能例は24/27例, malignant melanoma(MM)の評価可能例は15/15例, malignant lymphoma(ML)の評価可能例は13/14例, extramammary Paget’s disease(EPD)の評価可能例は7/8例であった。SCCでCDDP, CBDCA, ACR, CQ添加後のコハク酸脱水素酵素(succinate dehydrogenase; SD)活性値はそれぞれ45.0, 47.9, 47.3, 44.0%,MMでADM, MMC, CDDP添加後のSD活性値はそれぞれ28.3, 29.2, 36.7%, MLでVLB, CDDP, CPA, DNR, ACT-D添加後のSD活性値はそれぞれ35.6, 34.0, 37.0, 22.2, 32.3%, EPDでCPA, VP-16添加後のSD活性値はそれぞれ29.1, 40.3%で感受性(+)であった。今回は,各腫瘍で経験的,標準的に使用されている薬剤での高い感受性,同一薬剤に対する腫瘍間の感受性の差は共に認めなかった。皮膚腫瘍領域で抗癌剤感受性試験の報告は少なく,SDI法の臨床応用には症例数の集積とともに方法の研究,改善が必要と思われた。
講座
治療
  • 矢沢 典子, 近藤 靖児, 神保 孝一
    2001 年 63 巻 4 号 p. 443-447
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    疼痛·そう痒を伴う各種皮膚疾患患者34名(男性20名,女性14名,平均年齢53.9歳)を対象に0.025%カプサイシン軟膏を外用し,その有用性を検討した。各疾患ごとの有効率は,帯状疱疹後神経痛(PHN)10例:67%,尋常性乾癬10例:67%,結節性痒疹2例:59%,慢性光線過敏性皮膚炎(CAD)3例:96%,アトピー性皮膚炎3例:41%,肥厚性瘢痕のそう痒7例:66%,肥厚性瘢痕の疼痛3例:75%であった。全症例の平均有効率は68%であった。カプサイシン軟膏外用後の刺激感·灼熱感は全症例でみられたが,症状の強い症例に対しては5%テーカイン軟膏を事前塗布することで対処した。その他の副作用として外用局所の紅斑:15%,流涙:3%を認めたが,他に問題となる副作用はみられなかった。以上より,カプサイシン軟膏は帯状疱疹後神経痛に有用であることが再確認されたとともに,慢性疼痛·そう痒を伴う各種皮膚疾患に対する局所療法としても有効であると考えられた。
  • 大塚 俊, 山蔭 明生, 山崎 雙次
    2001 年 63 巻 4 号 p. 448-451
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎20例に対しトシル酸スプラタスト(商品名:IPD®)を投与し,その前後で臨床的重症度スコアー,好酸球数,血清中LDH, IgE, eosinophil cationic protein(ECP), major basic protein(MBP), interleukin-4(IL-4)およびinterleukin-5(IL-5)を測定した。その結果,臨床的重症度スコアー,LDH, IgEで有意な低下がみられた。また,生検を施行し得た1例の組織中のIL-4, IL-5を免疫組織化学的に検討したところ,投与後で明らかな染色性の低下が認められた。以上より,トシル酸スプラタストはアトピー性皮膚炎に対し有効であると思われた。
  • 中山 樹一郎, 藤崎 亜紀, 幡本 明利
    2001 年 63 巻 4 号 p. 452-456
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    タカルシトールクリームを脂漏性皮膚炎様乾癬の顔面および脂漏性皮膚炎の顔面および体幹に外用し,その臨床効果,副作用について検討した。いずれの疾患も外用4週間で明らかな皮疹の改善効果がみられた。さらに脂漏性皮膚炎計10例についてケトコナゾールクリームとの臨床効果の比較を試み,両者は同等の効果を有すると判定した。1例にタカルシトールクリーム塗布初期にヒリヒリした刺激症状がみられた。以上の結果から,タカルシトールクリームは顔面あるいは体幹の脂漏性皮膚炎様乾癬および脂漏性皮膚炎に有効で,また,タカルシトールローションも頭部の皮疹に有効と考えられた。ステロイド外用剤のような長期連用による副作用もなく,脂漏性皮膚炎の治療にタカルシトール外用が極めて有用ではないかと考えられた。
  • 水谷 仁, 高橋 眞智子, 清水 正之, 刈屋 完, 佐藤 広隆, 芋川 玄爾
    2001 年 63 巻 4 号 p. 457-461
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎は,環境抗原に対する湿疹反応とともにIgEの産生過剰を伴うアレルギー性の免疫異常のほか,臨床的に乾燥性皮膚といわれる病態を示す。これは,皮膚バリアー機能に重要な役割を果している角質細胞間脂質であるセラミドが,顕著に減少していることによっていると推測されている。このことは減少したセラミドを外から補うことにより,バリアー機能が改善される可能性があり,さらにはアトピー性皮膚炎の改善が期待できる。天然セラミド2の類縁体である合成擬似セラミドを8%配合したクリームを外用することによる,アトピー性皮膚炎患者の乾燥皮膚に対する効果について,10%尿素クリームを対照として比較検討した。対象はアトピー性皮膚炎患者19例で前腕皮膚へ塗布し,皮膚所見及び総合判定により有用性を判定した。その結果,合成擬似セラミドを8%配合したクリーム使用群はその68%に有用性を認め,対照クリームとの比較でも有意な差を持って有用であった。さらに本試験開始前にダニの貼付試験で陽性であった4例について,試験製剤を4週間使用後に再度貼付試験を実施した。その結果,合成擬似セラミドを8%配合したクリーム使用群では4例すべてが陰性となり,バリアー機能が向上したと考えられた。以上より合成擬似セラミドを8%配合したクリームは,アトピー性皮膚炎患者皮膚に対する日常的なスキンケア剤として有用な製剤であると考えられた。
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