西日本皮膚科
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症例
放射線療法が奏効したKasabach-Merritt症候群の1例
藤田 淳史中西 元荒田 次郎西内 律雄宮村 能子小田 慈清野 佳紀吉田 敦史姫井 健吾武本 充広小林 満平木 祥夫片山 治子
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2003 年 65 巻 4 号 p. 336-342

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抄録

3ヵ月,男児。生後6週の頃右腋窩面に紫紅色の小結節に母親が気づいた。約1ヵ月間に急速に増大してきたため,生後3ヵ月のとき当科に来院した。右肩から胸部にかけての巨大腫瘤と全身諸所の点状出血斑が認められ,臨床的にKasabach-Merritt症候群(以下K-M症候群)を考えて検査したところ血小板数は著明に滅少していた。腫瘤の組織学的所見はangioblastomaであった。入院時精査にて凝固系異常を認めた。MRI所見では腫瘍は一部縦隔内へ浸潤していると思われた。Gabexate mesilate,prednisolone,Interferonα-2a,aspirinおよびticropidine hydrochlorideの内服,低分子ヘパリンの投与も著明な効果はなかった。Vincristine,prednisolone farnecylate外用及び圧迫療法を併用によりやや軽快,一旦退院したが徐々に食思不振となり全身状態が悪化したため再入院し,放射線照射(4 MvX-ray 1Gry/日×10days; 総照射量10Gry)を施行した。血小板数,凝固機能ともに速やかに正常化するとともに,腫瘍は徐々に消失した。入院中より現在まで特記すべき副作用はみられなかった。K-M症候群の治療の際,腫瘍組織に対する放射線照射は安全性と生命予後に対する貢献度の高い治療法であると思われる。

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© 2003 日本皮膚科学会西部支部
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