抄録
薬疹の原因薬剤同定におけるパッチテスト(PT)の意義を明らかにするために,福田の「薬疹情報第10版」に記載されているPTを施行された薬疹報告例1650例を解析した。薬疹の発疹型別,薬剤系統別,個別薬剤別にPTの陽性率を検討したところ,全薬疹症例におけるPT陽性率は55.4%であった。発疹型別にみると,感作T細胞による表皮傷害が認められる発疹型(湿疹型,多形紅斑型,ジベル型,播種状紅斑丘疹型,紅皮症型,薬剤誘発性過敏症症候群など)の薬疹で陽性率が高い傾向がみられた。固定疹型では病変部でのPTが全例で陽性であった。一方,scratch dermatitis型や薬剤性SLE,紫斑型,薬剤性天疱瘡ではPT陽性率は低かった。個別薬剤別の解析では,ほぼ100%の陽性率を示す薬剤群(塩酸クリンダマイシン,イオメプロール,ベラプロストナトリウム,塩酸メキシレチン,ジフルニサル)と全く陽性反応を示さない薬剤群(インターフェロン-α,トシル酸トスフロキサシン,オキサトミド,ジアフェニルスルホン,シンナリジン,メタゾラミド)が存在することが判明した。以上のような事実はPTの実施とその結果の解釈に際し,大いに参考になると考えられる。