2007 年 69 巻 4 号 p. 387-391
74歳,男性。1955年頃股部白癬に対して限界線照射治療が行われた。その40年後の1995年,限界線照射部位である左鼠径部に難治性潰瘍が出現し,切除標本によりボーエン癌と診断した。限界線照射50年後の2005年,同じく限界線照射部位の左鼠径部に小潰瘍,左大腿部に結節が出現し,病理組織学的にそれぞれ有棘細胞癌(SCC),基底細胞癌(BCC)と診断した。本症例は限界線治療後50年という長い潜伏期間を経て異なる組織型の皮膚癌を同時に発症した症例であり,過去の限界線照射後に生じた皮膚癌の症例と比較検討し文献的考察を加え報告する。