抄録
44歳,男性。初診の十数年前に右母趾に灰青色斑があるのに気付いた。数年前より徐々に灰青色斑は拡大し,自発痛も伴うようになった。局所麻酔下に全摘術を行った。患者は同部に鉛筆の芯を刺入した記憶を有していなかったが,病理組織学的にpencil-core granulomaと診断した。Pencil-core granulomaは,鉛筆の芯に対する異物肉芽腫であり,青色~黒色の皮下腫瘤を呈する。異物の刺入の数年~数十年の後,急速に増大する。自験例と同様,患者に鉛筆の芯が刺入したという記憶がないことも多い。急速に増大する点や色調から,悪性黒色腫や悪性青色母斑などとの鑑別が重要となる。