2008 年 70 巻 4 号 p. 398-401
症例は62歳の女性。1年前にGraves病にて甲状腺亜全摘術を施行された。術後早期より甲状腺機能低下となり, レボチロキシンNa内服にて甲状腺機能は正常化していた。術後1ヵ月頃より両側下腿伸側に浸潤性紅斑が出現し, その後しだいに皮疹が拡大してきた。さらに下腿の腫脹も出現してきたため, 本院を紹介された。両側下腿伸側に浮腫性に腫脹し, オレンジ皮様の外観を呈する浸潤性紅斑を認めた。左側下腿前面皮膚生検の病理組織所見にて著明なムチン沈着を認め, 脛骨前粘液水腫と診断した。治療として“トレパン打ち抜き術およびステロイド局注併用療法”を行った。下腿前面のオレンジ皮様の浸潤性紅斑部に5mmトレパンにて3cmの間隔で4ヵ所の穴を打ち抜いた。ムチンを圧出後その開口部よりステロイドを局注した。本法を合計6回行ったところ下腿の腫脹は平坦化し, 紅斑も褪色した。本法は脛骨前粘液水腫の治療手段として考慮すべき方法と考えられた。