抄録
40歳,男性。約15年前から上口唇に丘疹が出現し,徐々に増大した。手術目的で当科を紹介受診した。上口唇右側に径15mmの前方に突出した常色結節があり,一部白色調を呈していた。毛包上皮腫などの付属器腫瘍を疑って切除した。切除標本では表皮は肥厚,過角化を示し,一部乳頭状の増殖を伴っていた。真皮内には比較的境界明瞭な大小の結節状病変があり,管腔形成を伴う上皮成分の領域と粘液腫様あるいは線維化を伴う間質の領域がみられた。管腔上皮には断頭分泌があった。免疫組織学的検討もあわせて行い,皮膚混合腫瘍のアポクリン型と判断した。毛包への分化もみられた。一部表皮の乳頭腫様変化を伴っており,比較的珍しい症例と考えた。当科および九州大学皮膚科で皮膚混合腫瘍と診断した10例について検討した。