西日本皮膚科
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症例
非SH薬による薬剤誘発性天疱瘡と考えられた1例
林 周次郎籏持 淳中野 敦子石川 里子濱崎 洋一郎山崎 雙次高野 幸一石川 智子酒井 英紀今井 裕
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2010 年 72 巻 3 号 p. 204-208

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抄録

75歳の男性。慢性腎不全,高血圧などのため初診の1年前からimidapril-HClと,doxazosin mesilateを含めた13種類の薬剤を投与されていた。2週間前より口腔粘膜に糜爛が出現し1週間前より体幹,四肢に拇指爪甲大までの紅斑,糜爛が出現し当科を受診した。舌の組織所見は粘膜基底層の直上に表皮内水疱を認めた。血清の抗Dsg3抗体はindex値133と陽性であった。以上の臨床所見,組織所見,血清の抗Dsg3抗体値より,尋常性天疱瘡(PV)と診断された。内服中の薬剤のうち7剤を中止し,プレドニゾロン(PSL)を60mg/日より投与を開始したところ,10日後には色素沈着を残すのみとなった。治療開始3ヵ月後には抗Dsg3抗体は陰性化し,その後PSLの内服を中止したが皮疹の再燃はみられなかった。経過から,薬剤誘発性天疱瘡(drug-induced pemphigus : DIP)の可能性が考えられた。これまでに国内外で報告された,原因薬剤の構造式にSH基を含まないDIPのなかで,皮疹のタイプがあきらかな症例は51例あった。それらを集計した結果,imidapril-HClや,doxazosin mesilateなどのように構造式に活性アミド基を有する薬剤が約70%あり,皮疹の多くは,これまでDIPで多く報告されていた落葉状天疱瘡や紅斑性天疱瘡ではなく尋常性天疱瘡であった。

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© 2010 日本皮膚科学会西部支部
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