西日本皮膚科
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症例
アナフィラキシーを呈した成人肥満細胞症の1例
豊田 美都国場 尚志桐生 美麿古江 増隆
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2010 年 72 巻 5 号 p. 457-461

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抄録

43歳,男性。4,5年前から頚部,体幹に褐色斑があり,アルコール摂取の度に赤みを帯びていたが放置していた。2007年9月,夕食でアルコールを摂取し,リハビリを行った後,頭部そう痒,嘔吐,意識消失,血圧低下を生じ,搬送後,ステロイド,強心薬を投与され改善した。発症する1ヵ月前に左上腕骨を骨折し,プレート固定術を受けていたため,金属アレルギーの関与を疑い,パッチテストを行った。その結果,プレート成分であるチタン-バナジウム-アルミニウム合金とチタンに陽性であった。抜釘術の際に採取したプレート周囲の組織内には,好酸球をまじえる炎症細胞の浸潤が認められた。2009年3月,体幹の褐色斑を指摘され,当科を受診。頚部,前胸部,背部に褐色斑が散在しており,病変部のDarier徴候が陽性。同病変部を生検し,病理組織学的に真皮内に肥満細胞の浸潤がみられ,トルイジンブルー染色で異染性を示し,トリプターゼ染色で陽性であり,肥満細胞症と診断した。アナフィラキシーにおいて,アルコール摂取が関わっている可能性があり,肥満細胞症患者が金属アレルギーを背景にアナフィラキシーを発症したという報告は過去なかったが,本症例はそれらの関連を示唆するものであり,注意を喚起すべきと考えられた。

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© 2010 日本皮膚科学会西部支部
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