西日本皮膚科
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症例
象皮病の患肢に皮膚悪性リンパ腫を併発した1例
森桶 聡河合 幹雄信藤 肇秀 道広
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2010 年 72 巻 5 号 p. 482-486

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抄録

67歳,女性。約30年前,婦人科で悪性腫瘍に対して放射線療法を施行後,左下肢にリンパ浮腫が生じ徐々に増悪してきた。患肢全体に高度の苔癬化,皮膚硬化を伴うようになり,18年前に当科を初診しリンパ浮腫および象皮病の診断を受けた。以後,外来で加療されていたが,健側の3倍径となった患肢に蜂窩織炎を併発した。当科に入院し加療中,左大腿に小豆大の紅色丘疹が数個出現した。ステロイド外用に反応しないため,生検を行い,皮膚B細胞悪性リンパ腫と診断した。全身精査にて他臓器に腫瘍病変を認めず,primary cutaneous diffuse large B cell lymphoma, leg typeと考えた。化学療法を施行したが,丘疹は短期間のうちに融合し,腫瘤を形成しつつ左下肢全体に拡大した。さらに急速に全身状態が悪化し,診断からわずか約2ヵ月の経過で死亡した。慢性リンパ浮腫症例は,長い経過の中で悪性腫瘍を併発する場合があり,特に脈管肉腫の併発がよく知られている。しかし,自験例のように悪性リンパ腫を生じ得ることも念頭において,慎重な経過観察が必要であると考えられる。

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© 2010 日本皮膚科学会西部支部
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