2012 年 74 巻 3 号 p. 278-280
58歳,男性。初診の半年前より右前胸部の皮下結節を自覚し,近医にて腫瘍切除術を行われた。病巣部の病理組織学的検査より血管肉腫と診断され,精査加療目的に当科へ紹介となった。前医病理組織学的所見では腫瘍は皮下深層に境界明瞭な結節性病変として認められ,腫瘍の大部分は紡錘形~多稜形で,細胞質に乏しく大型で異型な核を有する腫瘍細胞が増生し,不規則な管腔構造が互いに交通しており,vascular channelの所見を認めた。免疫組織化学的染色ではvimentin,CD31,CD34,VIII因子関連抗原で陽性であった。以上より自験例を血管肉腫と診断した。全身検索では転移を認めなかったことから,治療としては手術瘢痕より3cm離し,切除術を行った。術後電子線の照射を60Gy行った。現在照射終了後より4年経過しているが,局所再発や遠隔転移を認めていない。自験例の血管肉腫は前胸部という体幹発症症例であり,それに加え皮下結節型でもあった事から極めて稀な症例であった。