西日本皮膚科
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症例
頚部にみられたTrichophyton tonsurans によるBlack Dot Ringwormの1例
篠田 英和西本 勝太郎
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2012 年 74 巻 3 号 p. 281-283

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抄録

16歳,男子(高校生,柔道部)。約4週前より右側頚部に紅斑を認め,友人からもらった抗真菌薬を時々外用し3週間後には紅斑は消失したが,その部に黒点状の生毛がみられた。KOH法による直接鏡検で生毛はS字状に屈曲し,毛内性菌寄生の像が観察された。黒点状の生毛よりサブローブドウ糖寒天培地を用いた培養でTrichophyton tonsurans (T. tonsurans) を分離した。臨床および真菌学的所見より頚部にみられたT. tonsurans によるblack dot ringworm (BDR)と診断した。T. tonsurans は毛への親和性が強いため,体部白癬皮疹内の生毛にも毛内性菌寄生がみられることがあり,抗真菌薬の外用のみで治療を行い内服治療が遅れると治癒の遷延を招くことがある。このような場合体部白癬でも皮疹内の生毛にblack dot (BD)が作られると考えた。BDRは一般には頭部白癬の1病型に対する診断名として用いられているが,BDを一つの症状と捉え,体部白癬の生毛でも黒点の生毛がみられたためBDRの診断名を用いた。

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© 2012 日本皮膚科学会西部支部
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